「東アジア共同体」は、統一の歴史観が大前提。

 鳩山内閣は、自民党政治に止めを刺します。
これは、国民による本格的な革命の端緒となる可能性があります。
革命とは、社会を構成する規範のもと=「権威」 の交代をいいます。
日本社会の場合、その権威は、戦後になっても歴史的に一貫して、天皇です。
天皇の存在は7世紀に創出された後、 幕末の尊皇攘夷で再確認(再評価)され、
明治の薩長政府によって、中央集権の核にバージョンアップされていきました。
さて、多文化共存の「友愛」を掲げ、人類社会に「環境対策」を求め、そこに、
ビジネスチャンスもある、という鳩山さん。
国連総会の前に、中国の胡錦濤さんと面談し、
「東アジア共同体」構想 を提案です。
この発想は ビジネス現場からの要請と、 ヨーロッパのEUに倣った地域統合から
来ているのでしょうが、アジアで国家を乗り越えるときに立ちはだかる大きな問題は、
 皇帝 と 天皇 の関係です。
民主党は、 どこまで、真剣に考えているのでしょう。
地域統合の手本はヨーロッパですが、そこには、4世紀に確立した「三位一体」の
キリスト像=カトリック(正統)に対して、それをどう考えるか、という問いかけが、
統一した基準つくりの出発になっていましたが、 アジアでは、どうでしょう。
ヨーロッパ近代は、カトリック(正統)の権威に疑問を持つ宗教革命から始まり、
神をどう理解しているか、自分の考えを確認していくことで 自我形成が進められ、
それぞれの政治的立場を確立していき、各個人が統治者としての権利(参政権)を 
獲得していきました。 
 しかし、東アジアには、そうした共通した「正統」は、あったのでしょうか?
 中国では、孫文は皇帝権を否定し、毛沢東は、その皇帝権の正当性を保証した
儒教を否定することで、封建的土地所有関係を壊す、社会革命を達成しましたが、
日本は明治期に、その儒教での上帝 と カトリックでの神 という思想的地位を、
天皇の権威の中に取り込んで、アラヒトカミにまで、成長させていったのです。
皇祖神アマテラスの肉体の継承者である天皇陛下 に、 天皇霊のスメロギが、
「三位一体」化しているのが、アラヒトカミ。  これは政治的に作られた概念です。
それを思想的基盤とする政治行動が、支配地域の住民全てを、天皇の赤子=皇民
とする、 「大東亜共栄圏」 構想でした。
 この日本発の政治概念に対し、アジアの各地域の反応は、まちまちでした。
王権の確立していなかった、台湾や島嶼地域では、進んで日本人とおなじく、
天皇の赤子になりましたが、 朝鮮、中国、シンガポールでは、違いました。 
大反発が起きました。 朝鮮は日本に併合されましたが、中国政府は分裂し
最後はアメリカに助けを求めました。
 アジアにはこうした過去の経験があります。
その「大東亜共栄圏」との違いを明確にしないまま、
安易に「東アジア共同体」をいうのは、 拙速も甚だしいものです。
本当に、 国家戦略を出せるのでしょうか?
まだ、「東アジア経済共同体」 というのなら、 理解もされましょう。
これは、地域統合の原理でなく、あくまでも経済的な相互利益を、
戦略的に追求するものだからです。
>> 何を 新たな権威とするのか?
ここに共通点を見出せない限り、「東アジア共同体」は、完成しません。
自民党政治を終わりにするのは、今回、政権をとった民主党ですが、
その民主党の限界は、 ここに明確に現れています。
以下は、共同のニュース記事からです。
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鳩山由紀夫首相は21日夜(日本時間22日午前)、中国の胡錦濤国家主席とニューヨークで就任後初めて会談し、日中関係について「互いの違いを認めながら信頼関係を構築し、東アジア共同体を創造したい」と提案した。
両首脳は朝鮮半島非核化に向けて努力する考えで一致した。会談後、首相が記者団に明らかにした。
東シナ海ガス田開発をめぐり、鳩山首相は「友愛の海にすべきだ」と強調し、胡国家主席も「平和友好協力の海にしたい」と応じた。
 首相は会談で、アジア各国との連携を重視する「鳩山外交」の基本方針を説明。地球温暖化対策や世界経済など国際的課題での日中協力をめぐり意見交換した。北朝鮮の核、拉致問題も取り上げ、北朝鮮が6カ国協議へ早期復帰するよう同国に強い影響力を持つ中国に働き掛けを要請したとみられる。
 両首脳は中国・天津で来月上旬にも開かれる予定の日中韓首脳会談の際に、再会談する見通しだ。首相は21日夜、会談に先立ち政府専用機でニューヨークに到着した。(共同)

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。