阿修羅像は、鎌足臨終時の不比等の心だ。

 今年は、平城京建都1300年です。
奈良興福寺の文化講座が、東京でも受けれるようですね。
もっと早く知っていればいればよかった。
興福寺の宝物の中でも、最高傑作は、阿修羅像でしょう。
父・鎌足が死去するとき、不比等は、10歳です。
絶頂期の天智は、鎌足の死の前日に、最高位階の大織冠(だいしょくかん)を与え、
その子孫が藤原姓を名乗ることを許しますが、鎌足自身の心はどうだったでしょうか。
長男の定恵は、唐からの帰国後、すぐに殺されています。
鎌足は、まだ幼い次男の史(不比等の幼少名)に、何を話した(託した)のでしょう。
その天智は宇治の木幡に行った直後、死にますが(671)、それから大宝律令ができるまで
の30年間は、日本列島は、倭国から日本国へ移行する、日本史上、最大の激変期です。
その渦中で成人し、今に続く日本人の精神的基盤を作り上げたのが不比等です。
私は、父鎌足によって示された難題に対し、正面から向き合い、なんとしてでも克服しようと
懊悩していた不比等の姿を、この阿修羅像に見ます。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。