自民が下野するとき、細川政権との違いは?

1) 自民が下野するときとは?
 今から、16年前の1993年、自民党が下野したことがあります。
熊本県知事だった細川護煕が日本新党をつくり、小沢一郎の画策で
誕生した細川政権です。
あのとき、一旦は、55年々体制が終わったかのように見えましたが、
自民党は、ずっと国会でライバルであった野党・社会党の村山富市を
担いで、すぐに政権を奪回しました。
社会党は、戦後政治で、野党ではあっても、55年体制の中の存在です。
そして、1993年という年は、戦後、日本の脅威とされたソ連は消えましたが、
新たに、北朝鮮が、日本にとっての脅威として登場することになった年です。
すべては、アメリカの世界戦略の中でのことです。
それで、すぐに、自民党は、復権できました。
しかし、今、そのアメリカは、足元から壊れているのです。
そうなると、今、どこが、国際政治の主導権を持っているのでしょうか?
経済の中心は、今、中華圏です。
その核は、三つあります。そして、ものすごいスピードで融合しています。
  北京
  台北
  シンガポール
去年のオリンピックに続いて、来年の上海万博は、
この三者の、完全融合の記念事業となるでしょう。
つまり、西欧によって、壊された中華の修復と復活です。
この、冷徹な現実を踏まえていない限り、 
今後の日本の繁栄は、ありません。
 
2) 歴史を知りましょう。
 幕末の尊皇攘夷のうねりは、最初は、この中華圏と一体になって、
西欧の帝国主義=《夷狄》を撃つ、 <攘夷>のはずでしたが、
日本の明治政府は、いつの間にか、その《夷狄》を師と仰いで、
アジア侵略を始めました。
西南戦争後、明治政府が、最初に攻め入ったのは、台湾でした。 
「未開の野蛮地域を、近代化した明治国家が文明化する」という、
明治版、あるいは、日本版の「華夷秩序」を、アジアに広げだしました。
しかし、その裏には、 イギリスがいました。
明治時代の日本政府は、本人が無自覚だったかもしれませんが、
完全に、<イギリスの走狗> でした。
特に、清国と朝鮮半島の優先権を争った日清戦争で日本は勝利しますが、
下関条約では、賠償金に銀2億両(テール)分の金塊を3年以内に払えと
いう厳しい要求以外に、
 鉄道の敷設権とその周辺の鉱工業の開発権を求めるよう、イギリスに
入れ知恵されました。
 イギリスは、清国が他国に与えた条件は、そのまま自分の国にも均等に
与えられるという、最恵国待遇を得ていましたので、 日本に過大な要求を
させることは、そのまま、自分にとって都合のいい要求の貫徹でもあったのです。
>> これが、植民地化の<走狗>の 始まりでした。
日本の教科書は、ここをきちんと教えませんが、
今の中国共産党の高校の授業では、この点を、ことさら強調して教えます。。
 下関条約は、 日本が金本位制を確立する重要な条約ですが、
清国は、この賠償金額の返済に際し、すぐに資金が用立てられないので、
各港湾の関税権を担保にして、イギリス、フランス、ドイツ、ベルギーなどから、
資金を借ります。
それが、返せなくなって、それぞれの港湾は、資金を貸した国に自由に
使われ出したのです。 そして、租界が生まれました。
 いわば、日本は、 <西欧の犬> でした。
 このときは、イギリスの犬でした。 
そうした状況に嫉妬して、遅れてアジアに入ろうとしたのが、アメリカです。
もっと正確に言えば、アメリカの資本家です。
このとき、またまた、日本を使って、中華の土地(富)を、切り取りにかかります。
そして、同時に、イギリスの覇権(世界基軸通貨発行の地位)に挑戦します。
3) アメリカの代官所政権の終わり
日本が日露戦争後、国策として満州進出した裏には、特に、
陸軍の背後の軍事産業には、このアメリカの働きかけがありました。
そのアメリカに、パールハーバーで戦いを仕掛け(仕掛けさせられ)、 
日本は、敗戦します。
そして、アメリカは、日本を無条件降伏させ、宗主国の地位を得ました。
1993年の細川政権のとき、宗主国アメリカは、まだまだ健在です。
アメリカの政権は、パパ・ブッシュからクリントンへ替わりましたが。
当時のアメリカ経済は、双子の赤字が危惧されていましたが、
キャッシュデスペンサーの日本がいて大丈夫でした。 日本は属国。
しかも、そこには、ワシントンやNYに向けた核ミサイルはありません。
2000年のY2Kで、アメリカが全世界を脅したとき、考え出されたのが、
中国の巻き込みです。
2001年「911」後、輸出で稼いだ外貨準備で、米国債を買うという役割は、
中国にも拡大され、投資がすすみ、一気に工業基地になりました。
今、中国は、2兆ドルの外貨準備があります。
そして、なにより、核ミサイルが、 アメリカや日本にも向けられています。
その中国の発展がないと、アメリカ経済は回りません。
今回、アメリカの日本列島代官の自民党は、いま、その親分が、
「お前なんか構ってられるか」という段階になっているのです。
つまり、 自民党は、命脈が尽きています。
しかし、民主党が、 こうした新事態に叶った、政党であるのか?
これは、大いに、疑問。
支持基盤が、連合や自治労、そして、田中角栄が作った郵便局です。
まったく新しい政治パワーは、必ず、新時代にあったビジョンをもちます。
ただ、今の日本の政治は、明治にできた既得権の岩盤をどう壊すか、の段階です。
しかし、これから出てくる、本当のパワーを生み出す、ビジョンには、 
実は、日本社会を構成する、権威の根拠 にまで 変更を迫ります。
島国の日本だけに通用した、奇妙な論理を捨てるときが迫っています。
このインパクトは、強いですよ。 覚悟しましょう。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。