最後まで「黒塗り」されていた葛西敬之氏。検察審で「起訴相当」の議決が出てすべてがひっくり返る可能性もまだ残されている。

重要なので、週刊朝日の記事を全文転載します。


財務省「黒塗り」で隠された安倍夫妻と日本会議系人脈
2018/06/07 07:00

 加計学園が“嘘”をついたと謝罪し、愛媛県の“告発”をなかったことにした安倍晋三首相。佐川宣寿氏ら38人の不起訴処分で森友文書改ざん問題とともに幕引きを図る。だが、財務省が公表した4千ページに及ぶ文書の黒塗りを剥がすと、安倍夫妻に不都合な真実が浮かび上がってきた。

 1年半ぶりに国会で行われた党首討論の翌日の5月31日、加計学園の渡辺良人事務局長らが愛媛県と今治市を訪問し、“嘘”を謝罪した。
 安倍首相と加計孝太郎理事長が2015年2月25日に面会した際のやりとりなどを記した愛媛県の公文書が公開され、国会で問題化。その報告者として名指しされた加計学園は後日、慌ててマスコミにあてたファクスで<当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまった>と釈明した。
 文書を公開した中村時広愛媛県知事に批判され、謝罪に訪れた渡辺事務局長は、記者団に苦しい弁明を繰り返した。
「嘘で認可になったのではない。県と市と加計学園で頑張った」
 その一方で、愛媛県文書に記載されている内容については、安倍首相と加計理事長の面会以外は「正しい内容」と胸を張った。
 しかし、愛媛県文書の記述では、県と今治市に加計学園が会合の申し入れをした理由は、<加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいと申出>があったとなっている。
 また、同年3月15日に再度、加計学園と市は会合したが、そこでも<理事長と総理との面会を受け、同(柳瀬唯夫・首相)秘書官(当時)から資料提出の指示あり>などと記されている。記者にここを突っ込まれると、「3年前のことではっきりと覚えていない」としどろもどろ。
「事務局長は加計理事長の側近中の側近で酒席にはほとんど同席している。加計理事長に責任が及ぶような嘘を県と市に話すわけがない。それも理事長の腹心の友、安倍首相に関する話ですよ。事務局長は奥様を早くに亡くされ、再婚した相手が理事長の信頼が厚い弁護士の親族。事務局長の息子たちも加計学園系列の職員です。自ら泥をかぶり、理事長と首相を救ったんじゃないかと、学園ではもっぱらウワサになっています」(加計学園関係者)
 一方、財務省は森友文書改ざんの“主犯”として6月4日、佐川氏や理財局の中村稔総務課長らを停職などの処分に。これまで疑惑の渦中で、数々の“舌禍”を起こした麻生太郎財務相は早々に続投が決定。結局、政治家は誰も責任を取らぬまま、幕引きとなった。
「今や財務省内の最大の関心事は事務次官人事と19年10月に予定されている消費増税です。麻生財務相は自分が辞めたら安倍政権は持たないと公言し、消費増税に道筋をつけるという大義名分で居座り続けるつもりです。そうすれば、自然と安倍3選の流れになるという腹づもりなのでしょう」(政治ジャーナリストの角谷浩一氏)


 安倍政権がここまで強引に幕引きを図るのには理由があった。その鍵となるのが、財務省がホームページ上で公表した約4千ページにのぼる森友学園との交渉記録や改ざん前の決裁文書だ。だが、財務省はあるミスを犯していた。当初、文書は5月23日に公開されたが、約3時間後にすべて削除。翌日未明に改めて公表し直された。なぜこうなったかというと、パソコンである操作をすると、黒塗りで隠した部分が簡単に見えるようになっていたからだ。
 そこで本誌は当初、公表された文書から黒塗りされた箇所をすべて剥がし、改めて内容を精査。すると、不都合な安倍人脈が浮かび上がってきた。
 財務省が改ざんした文書には、籠池泰典前森友学園理事長が日本会議大阪支部の幹部名刺を持ち歩き、安倍首相、麻生財務相らも日本会議と表裏一体とされる「日本会議国会議員懇談会」役員であることが記されていた。また、籠池夫妻は昭恵夫人だけでなく、櫻井よしこ氏、渡部昇一氏ら錚々たる保守系文化人を学内に呼び、講演会を主催。
 文書を見ると、財務省は安倍首相と近い日本会議系の人脈を注意深く分析していたが、最後まで黒塗りされていた大物がいた。
 首相の後見人とされるJR東海名誉会長の葛西敬之氏だ。葛西氏の名前が交渉記録に出てくるのは、14年6月だ。森友学園側は、<〇〇学校の葛西敬之副理事長から、当方の小学校の卒業生を受け入れていただけるとの提携話があった>と近畿財務局に説明。
 JR東海を取材すると、「提携の話をした事実はない」と否定したものの、同年5月7日に葛西氏が籠池夫妻と面会した事実は認めた。
 さらに黒塗りを剥がすと、稲田朋美元防衛相とその夫・龍示弁護士、二階俊博・自民党幹事長の名前も出てきた。稲田氏も日本会議国会議員懇談会の役員を務める。稲田夫妻が登場するのは、土地貸付料の減額などを近畿財務局と交渉していた16年1月。
 籠池前理事長の妻・諄子副園長が「(龍示弁護士に)昔から顧問弁護士をお願いしている」と近畿財務局に説明。近畿財務局のメモとして<稲田龍示弁護士は自民党の稲田朋美政調会長(当時)のご主人><(稲田氏は)二階俊博総務会長(当時)と親密な関係>という注釈がつけられていた。森友問題を追ってきた文筆家の菅野完氏はこう解説する。
「稲田氏の実父・椿原泰夫氏(故人)は、関西の保守界隈ではどんな活動にも顔を出していた有名人。籠池氏とはその中で出会い、その関係から、稲田夫妻は森友学園の弁護士になりました」
 近畿財務局らが話し合いのために龍示弁護士の事務所を訪れた際の同弁護士の挨拶も記録されていた。
<過去から籠池理事長とはお付き合いがあり、尊敬している>
 しかし、龍示弁護士が森友側に<あきらめるしかない>と発言したことに対し、諄子氏が激怒。近畿財務局に<全く納得できないので、先生にも噛みついた>とぶちまけていた。
 注目すべきは森友学園の理事だった柳澤忠麿氏(故人)だ。大阪護国神社の宮司で、日本会議大阪の議長代行・運営委員長という役職を務めていた。
 森友側が日本会議系の安倍人脈を巧みに利用し、財務省を籠絡したことは記録からも明らかだ。

 前出の菅野氏は「日本会議が組織として動いたわけではない」としながらも、こう指摘する。
「森友事件が明らかにしたのは、日本会議に集まるような保守界隈の人たちが籠池氏の教育理念に共感し、政治的な行動をし、小学校建設を実現しようとしたこと。そこに脅威を感じる」

 一方、その籠池夫妻をあれだけ長く勾留しながら何一つ疑惑に切り込めなかった大阪地検特捜部に対する不信が渦巻いている。
 公用文書毀棄容疑で佐川氏らの告発状を提出していた神戸学院大学の上脇博之教授が怒る。
「昭恵夫人付政府職員が財務省に“口利き”したことが文書に赤裸々に書いてあったから、財務省は改ざんしたのです。昭恵氏が関わったからこそ8億2千万円もの無理な値引きが敢行された。それでも罪に問えないなら、政治家の口利き天国になる
 元東京地検検事の郷原信郎弁護士は上脇教授が提出した告発状に注目する。
今回は検察が起訴していれば有罪になったはず。なのに起訴しなかったのは、最初から全面不起訴の結論ありきだったからです」
 上脇教授は近日中にも、検察審査会に申し立てを行う予定だ。 
検察審で「起訴相当」の議決が出てすべてがひっくり返る可能性もまだ残されているという。 

(本誌・吉崎洋夫、亀井洋志/今西憲之)※週刊朝日  2018年6月15日号

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この記事を書いた人

新井信介

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。