痛々しく哀しい辞任劇。

松本大臣、涙目で辞任会見ですか。
権力を持ったときの、この人のものの言い方に、確かに、問題があります。
まず、人間を上下で判断しようとしたことです。
一番、肝心なのは、現地の復興を一日も早く達成すること、との思いは、
一緒なのでしょうが、もろに、権力を振りかざす言説が、日本国民の怒りを呼びました。
言ったほうも、言われたほうも、それよりも、こういう場面を目撃してしてしまった
われわれ日本国民も、とても心が痛みます。
そして、哀しくなります。
自分の言説で、自分が加害者になっていたことを、大臣になって初めて知ったのでしょうか?
私はこの方の祖父、松本冶一郎さんたちが水平社運動を立ち上げたときの情熱が好きです。
『人の世に熱あれ、人間(じんかん。人の間)に光あれ』
この言葉は、今の東北大震災で苦しんでいるときにこそ、もっとも必要だったのですが。
『光り』とは、情報であり、これは、知恵です。それも、「智慧」です。
色々、考えさせられます。
自分が、なぜ、日本人の社会構成の原点を調べるようになったのか?
それは、なんでも上下でランク付けし、ひとたび上位者となったら、強圧的に他者を押さえつける
強者の精神性と、すすんで、自分の考えを捨て、強いものに従おうとする自己放棄の精神性を、
なんとしても、変えたい、と考えるからです。
自分で考えろ、知恵を出せ。 この指摘は間違い ではなかったのですが。
「お上にたよるな」は、私の信条です。
そして、今では、地球すべてを飲み込んで、すぐ目の前の問題に、解決策を考える。
まったくの瓦礫の山や不毛の砂漠に、どうやって、人間の伸びやかで潤いのある繁栄を実現するか。
もっとも大切なのは、
 人間同士の心の共感でした。
 魂が響きあうことでした。
 私自身も不注意な言動で、思わぬ苦しみを出会う人に与えているかもしれません。
そして、今ここで松本大臣の背景を考えたとき、日本の長い歴史が頭をよぎります。
日本人とは、持統が皇祖神アマテラスを作り出して、日本列島にいるすべての人間を
その子供である、という信念体系が生まれたときから始まっています。
日本の天皇の前身は、倭王ですが、これは、第十代の崇神天皇のときからです。
その地位は、卑弥呼が、親魏倭王になったときから、国際認証されました。
倭王は、「国譲り」のあとに、正式に誕生したものです。
持統は、その「倭王」の前の、古代出雲の王、ニギハヤヒをきちんと出雲に祭ることで、
政権を安定させました。
しかし、参謀の不比等は、持家が死ぬ(703)と都を奈良に移し、ここで、通貨「和同開珎」を
つくり、さらに、記紀の編纂。
聖武は大仏造像を発願し、場所を恭仁京などに移ろいながら、再び、奈良に戻して大仏を造像。
その聖武の娘の孝謙・称徳が死去した後、白壁王が即位し光仁天皇。
その息子が桓武天皇で、都をいったん長岡京に移したあと、京都に遷都。
今、東京で、巨大地震の発生が危惧されています。
東京の石原知事と大阪の橋下知事は、大阪を「副首都」として、首都のバックアップ機能
を持たせることに合意しましたが、皇居のバックアップは、すでに、京都にあります。
天皇は、京都御所内に、いつでも住まわれる準備が完了しています。
 千年の都、京都。
和気清麻呂に進言され、平安京の建設を決意したのが桓武(山辺王)です。
京都に遷都する際の桓武が、一番、慙愧の念を抱いていたのは、自分の母、高野新笠がかつて、
父帝の光仁の后になる時に、光仁の先の皇后、井上内親王を強引に廃后にしたことでした。
すべては、わが子、山辺王を天皇にしたいという、高野新笠と百済系諸部族の野心でした。
井上内親王は、実は、犬養一族の出身の母、広刀自と、聖武との間にできた女性でした。
高野新笠は百済武寧王の血脈ですが、ここに言及したのが、2000年12月の今上陛下の
「ゆかり発言」でした。
こうした歴史を考えながら、私の大好きな言葉が、頭に響きます。
 『悲心抜苦 慈心与楽』  BY 聖徳太子

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。