香港返還のときにも、「釣魚台を守れ」だった。

1) 尖閣諸島 は、 東アジアの再編成 の引き金。 
 9月7日に、尖閣諸島付近で日本の海上保安庁の船に体当たりした中国漁船。
 これは、東アジアに新しい、枠組みを作るきっかけになります。
 日本名の尖閣諸島は、中国名で釣魚島(別名、釣魚台)、
 これは、中国語文化圏の人間にとっては、政治的なメタファーです。 
 私が思い出すのは、1997年7月の香港返還です。
このときに、反北京政府を叫んでいた、香港の人権民主化運動の活動家が、この尖閣諸島
に上陸しようとし、失敗して、2人がイノチを落としました。
その前後、香港で、連日叫ばれていたのが、「釣魚台(尖閣諸島)を守れ」でした。
この返還直前の香港市民は、1989年6月の天安門事件の記憶が生々しく伝えられ、
最初、反北京の姿勢を明確に表して、返還に抗議していたのですが、 実際に英国と中国
との間で、現実化するのがはっきりしたとき、香港返還後の新たな支配者となる北京政府に、
武力弾圧といった強圧政策をしないでほしい、と、嘆願したのが、この「釣魚台を守れ」の
合言葉でした。
それに答え、このとき亡くなった活動家の二人を、北京政府は「革命烈士」の扱いで弔い、
香港にはこれまでの経済活動を保証することを約束し、「一国二制度」を明確化しました。
 釣魚台とは、北京の迎賓館のことです。  かつて、清の乾隆帝が建てた庭園でした。
今回も、何か、北京からみの事件であるのは、当然です。
しかし、この事件の仕掛け人が、北京政府とみるのは、すこし表面的過ぎるでしょう。
もっと、深いものがある。もうすぐ、上海万博も終わります。
これから、中国国内の深刻な矛盾が、いやがおうにも、表出してきます。 
結果として、今回の事件は、
 「中華圏を一つにしながら、国内矛盾から目をそらす」効果をもたらします。
2) 面子 と 経済状態を保ちながら ・・・。 
今回の事件は、反日活動にまで発展するかどうか?  私は、ないと思います。
反日活動は、一歩間違えば、いつ、中国共産党政府に対する反政府活動に切り替わって
いくか、わかりません。 大卒で、就職できない人間は、2000万人以上います。
これに火がついたら、 政治的な事件にとどまらず、中国の経済活動に大きな障害になり、
世界経済の不安定要素が、さらに高まります。
しかし、中国は、「面子(メンツ)の国」です。
 中国は、昨日、東シナ海の天然ガスの共同開発の協議を中止しました。
当然でしょう。 あれは、中国が主張する大陸棚のずっと内側で、日本側が国境と
主張する日中中間線の中国側でのガス採掘でした。 
 資源開発の国際慣行からすれば、本来、日本には、何の権利もなかったものです。
もし、海底で同じガス田が日本の領域にまで広がっていると抗議するのなら、日本の資源
会社が速やかに、採掘すればいいだけのことでした。 それができなかった。あるいは、
しなかった。 これは、純粋に、日本側の問題です。
 実際問題、 この大陸棚と、日中中間線の間に、リグを建てて、ガス採掘をしようとしても、
これまで、日本の海上保安庁も、海上自衛隊も、決して守ってくれなかったのです。
もちろん、アメリカは、ほったらかしでした。
 しかし、それが今回は、アメリカは放置しないどころか、出動するとまで表明しています。
もちろん、沖縄の米軍基地の縮小問題で、より有利にしたい、との思惑があるでしょう。
3) 日本では、本当の変革ができるのか?
 明日、民主党の代表選挙です。 
「無記名投票」なのですから、民主党の個々の国会議員たちが、最後にどちらに投票するか、
まったく分かりません。 
この選挙でたとえ不正があっても、これは、一政治団体内での選挙ですので、公職選挙法には直接、触れません。 つまり、日本国の 公権力が 乗り出すことはできません。
 
 民主党にせよ、今のすべての国会議員が、完全に忘れていることがあります。
 何を変えるのか? その対象(相手)のことです。
 これまでの体制を変えるというのなら、今の行政の当事者は、 すべて、「まな板に乗った鯉」
 なのです。 そこに、依存していては、何もできません。
 この鯉を切る料理人(組織)を、法律で、はっきりさせること。 ここが出発です。
 体制を変える公権力もった組織をまず、 国会で作り出す必要があるということです。
 「事業仕分け」とは、 これまでの「行政の無駄」の「あぶり出し」ではあっても、
 これまでの体制を変える作業ではありません。
 かえって、行政の体質を筋肉質にして、これまでの体制を強化する方向だ、ということです。
 その点、この10年間、中国は、日本の100倍のスピードで、国内を変えてきました。
 日本で、10年掛かかってもできない変革を、1ヶ月で決定し、実行しているのです。
 こうした、変革のための組織を、1985年から準備し、
 天安門事件後の1994年には、確立しました。 
 目的に別に省庁横断でタスクフォースを組んだ組織で、
 それが、国家体制改革委員会 となりました。 
 私の友人が、その中核にいました。 
 今では、その組織は、 国家発展改革委員会 とよばれます。
 ここは、国家が発展するために、どこをどう変えればいいかを検討し、
 具体策が決まったら、それをすぐに実行する権限をもった組織になっています。
 これが、日本にできるのか?
 いや、それをできる人間こそが、本物の政治家です。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。