山田正彦元農水大臣が警告;雑穀に注意を「農産物検査の規制緩和と「ゲノム編集」の登場で、日本における食の安全は内堀も外堀も埋められることになってしまいます。このままではまったく多国籍企業が自由に振る舞える状況が生み出されることでしょう。」

農産物検査法の 内容が変わります。
厳しい規制が緩やかになるので いいことだと 考えてる人は多いと思います。
ところが 実際には 生産者、消費者にとっては 大変なことになりそうです。
 印鑰智哉さんの指摘を 読んでくださいませんか
農産物検査法施行規則に関わるパブリックコメントはわずか期間が2週間、22日には締め切りになってしまうので、この問題を再びまとめます。
長くなりますので、何回かに分けて書きます。
 農産物検査は多くの人になじみがないことでしょう。農家や消費者にとってもやっかいなものなので、農産物検査の規制緩和は歓迎だ、と思われるかもしれません。
でも、この規制緩和には、極言すれば、日本のお米がなくなる、というほど大きな問題を引き起こしかねない問題があります。
 雑穀で起きたことが参考になると思います。
 近年、雑穀はブームとなり、雑穀を買う消費者が急増しました。
特にアトピーのお子さんを持つ親たちが雑穀を食べさせたのだけど、結果が芳しくない。
疑問に思った人たちがその雑穀を調べると、ポストハーベスト農薬が高濃度で検出されたのです。
 国産と書いてあったにも関わらず、その中身はほとんど輸入品でした。
実際には雑穀は飼料用に輸入されており、飼料用ということで高濃度の農薬が使われていた、それが雑穀ブームに乗って、飼料用を食用に転用してしまい、自然食品店などで販売されていたことがあったとのことです。
しかも、ほとんどが輸入の雑穀であるのに、国産と表示されていたのです。
 岩手県では雑穀生産が盛んで有機雑穀が作られているのですが、その岩手産の雑穀を少し混ぜるだけで、ほとんど輸入雑穀であるのに国産と表示できてしまう。これでは岩手県の農家はまったく利益にならないばかりか評判を落とされてしまうことになる。
 ここで岩手県の非営利団体ASACは岩手県で生産される有機の雑穀をしっかり流通できるように、岩手県や東京都などに働きかけ、東京都は1997年に有機農業流通協定を岩手県と結び、質のいい有機雑穀が流通できるようになりました。しかし、この自治体間のいい取り組みは、後に国に潰されてしまいます。
 その背景には輸入雑穀を売りさばきたい大手の総合商社と日本に輸出を増やしたい米国政府の存在もあったことでしょう。それには国内で行われる農産物検査が邪魔になるわけです。その圧力で、雑穀は農産物検査の対象から2000年に外されてしまいました。
 それまではアワやヒエでも品種銘柄が存在していました。以前は200種以上存在していたそうです。しかし、検査がなくなった後は一般の流通では品種銘柄は検査しないので表示ができない。つまりアワであればなんでもアワという状態になってしまい、国産の特定の品種のアワでも米国や中国で取られたアワでも同じにされてしまいます。
その結果、値段の安い海外産に打ちのめされることになってしまい、一般流通の雑穀ではもはや品種は何もわからない状態になったとのことでした。
 そして、国内の雑穀生産は年々、厳しい状態にぶつかり減ってゆきます。200種以上存在した雑穀の品種は70品種くらいに落ち込み、年々、日本の農場からはさらに失われていく状態になっています。
 つまり、農産物検査は品種の独自性を証明することで、その品種の生産、そして品種の多様性を守る意義があったということだと思います。
 農産物検査は農家の方にとっては面倒なもの、消費者運動やっている人たちからは検査によって等級つけられることでネオニコチノイド系農薬の使用が増加することにつながるもの、ということでどちらもやっかいなものという印象があるかもしれません。
 当然、古い制度なので改革は避けられません。等級制度は廃止すべきでしょう。
しかし、農産物検査の規制緩和の本質はこれまで存在してきた品種の独自性を消し去ることです。
 つまり、グローバルな品種であろうと「ゲノム編集」品種であろうと、なんでも同じにしてしまおうということにつながります。
 品種などなんでもいいと、なんでも同じにされてしまえば、結局、大規模でやっている海外産に潰されてしまい、その結果、日本国内の生産は根こそぎにされてしまう危険があります。その品種の独自性を評価することなしに、地域の農業の生き残りは困難でしょう。
 雑穀は農産物検査から外されることで、国内生産がより危機的な状況に追い込まれ、輸入品に市場を席巻される事態となりました。今、日本の農業の最後の砦といわれるお米でそれが起きようとしているということなのです。
今回の改正ではお米が検査から外されるということではありませんが、これまで指定の検査機関で検査しなければならなかったものが自主検査でOKとなり、さらに検査する品種も減らすことが明言されており、今後、この検査がどんどん骨抜きになる可能性が大です。
 農産物検査の規制緩和と「ゲノム編集」の登場で、日本における食の安全は内堀も外堀も埋められることになってしまいます。このままではまったく多国籍企業が自由に振る舞える状況が生み出されることでしょう。
 この規制緩和は例によってTPPで生まれた規制改革推進会議によって提案され、そのまま安倍前内閣が閣議決定したものです。この間、種子法廃止をはじめとする問題ある規制緩和はこの会議が実質的に決めてしまっています。
 その問題ある規制緩和を法律改正を要しないということで今回は国会審議もかけずに農水省内の内部検討会だけで、決めてしまい、わずか2週間のパブリックコメントで意見は聞いた、ということで実施してしまおうということです。
 種子法廃止、農業競争力強化支援法、種苗法改正と続いた一連の「改革」の仕上げとも言えるのがこの農産物検査法施行規則の改正ではないでしょうか?
 この事態にどう対抗していくか、早急に考える必要があります。まずはこの改正が問題であることを一人でも多くの人に伝え、コメントを一つでも多く出すことが大事だと思います。
パブリックコメント:
農産物検査法施行規則の一部改正案及び農産物検査法施行規則の規定に基づき標準抽出方法を定める件の一部改正案についての意見・情報の募集について
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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。