「平和の始まり」板門店を喜べない?陛下の高麗神社行幸の世界史的意味を読み取れなかった「忖度」政治。

今日、板門店から送られてきた映像には、実に感慨深いものがありました。早速、トランプは祝意の表明ですが、安倍チンどうした?

​半島分断の原因となった1950年の朝鮮戦争は、米ソ冷戦でのイデオロギー戦争という面だけだったのでしょうか?

結果を見れば、この戦争は、日本の戦後復興を早めた。そして、毛沢東には、蒋介石が逃げ込んだ台湾に軍事侵攻させること躊躇わせた。白頭山にあつまった「兵士(義士)」の中には、ポツダム宣言をうけいれた日本国に対する、抗議もあったかもしれません。中国の人民解放軍はアメリカ軍が駐留する南朝鮮に軍事侵攻をしかけ、一気に、半島の南端近くまで進攻しますが、そのとき、人民解放軍の彭徳懐の下には毛沢東の息子おり、戦死しています。

この猛攻から半島を奪い返すために、米軍を主体とする国連軍は、マッカーサーの指揮で仁川上陸し、戦況を盛り返し、そして、38度線での休戦ラインとなり、今日まで続いていたのです。

戦後の日本経済は、朝鮮戦争特需で、「重厚長大」産業が急回復。また、米軍に兵站の物資供給でも日本のものが使われ、食料(コメ、野菜)が主に西日本から集められ、長崎の佐世保で米軍に納入された。実は、西日本だけだと収穫シーズンが偏るので、私の住む北信濃からも野菜が運ばれたようです。

終戦後、戦火を逃れた半島の人たちは、日本列島に来ても、田舎には故郷はありませんでした。
しかし、遠い昔、まだ大宝律令ができる前、縄文を過ぎて弥生時代になってから、大陸に始皇帝が生まれ、青銅器や鉄が列島にも伝わると、多くの人士が、半島三国(高句麗・百済・新羅)のみならず、中国語圏・中央アジア・東南アジア・ペルシャ・インドなどから、日本列島の各地に入って融合・定着しました。

​ そこでは、縄文系の強い東日本と、漢字文化の強い西日本があったのですが、そこにインド・東南アジア・ポリネシアの南方系(海ルート)と、ユーラシアの北方系(騎馬・鍛造鉄)がさらに、入り込んで、列島は多くの部族が賑わいました。それらを、一つの国家として、まとめ上げる作業が始まったのが、精神的には継体・欽明のときから、そして、制度的には、鎌足の登場からです。
そして、鎌足の息子の不比等によって、古事記・日本書紀の編纂となり、列島に生きる人間たちに、未来に向けての共通の物語が完成しました。
そこでは、高天原という、神様がすむ空想(異次元)の世界と、大八洲という、三次元の日本列島という領域に広がる人間世界を、一つにつなぐストーリーがありました。
 この空想と現実という、二つの世界を 強引につなぐ存在だったのが、カム・ヤマト・イワレビコでした。この存在は、770年には近江三船によって、「神武」という漢風諡号をつけられました。

 平城京や平安京の人間の間で、この「神武」の存在は、果たして、神としての絶対性や、人間世界での実在性が、話されていたでしょうか? 鎌倉・室町では、どうでしょう? 
 しかし、明治維新後になると、この「神武」は、絶対の高みに立った。それも、すべての日本列島の血統の大元締めの地位に上がってしまいました。江戸時代の初期には、日本の天皇は、呉の太白の子孫だといっていたのが、林羅山ですが、それが、その弟子の山鹿素行が赤穂に行って、中朝事実を書き上げると、神代から続く天皇の絶対性を言い出した。そのころ起きた事件が、忠臣蔵の「討ち入り」でした。

 明治天皇(睦仁)は武家の棟梁として、維新の国民の前に出現し、以後、記紀神話は、真実の物語と教育され、刷り込まれたのです。神武天皇は、BC660年に橿原で実際に即位した、と。以後、すべての列島民は「天皇の赤子」だと国家権力で決められ、異論は許されなかった。
 明治政府は、国家の人的資源を含め経営資源を一つにして掌握する中央主権を、より強力に推し進めるには、これが最も手っ取り速い方法でした。そして、清国の藩国として、なかなか国を開かない李氏朝鮮を、檀君神話があるも関わらず、それを、記紀神話での出雲の「国譲り」の一部とみなし、併合に向かいます。天皇の皇祖神アマテラスの神威を大陸に広げる一歩だとして。
 しかし、朝鮮半島には、高句麗・百済・新羅の三国時代の王の血統が、列島に行って、天皇の中に流れている、との伝承は、ずっと残っていました。明治政府は、まず、それを消して、天皇を、高天原から来た、「神聖不可侵」な存在としてきたのです。

その一体感は、まず半島の支配権をめぐって日清戦争に勝利し、さらに西欧列強の中でロシアを破るという快挙を生み出した。これには西欧列強による植民地化が進められてきたアジア諸国からは、快哉が叫ばれた。

そして、神武ファンタジーが「神国日本」意識となり、「八紘一宇」は国家イデオロギーになって、天皇は、現人神となった。それを担ぐ皇軍は、主権者である天皇の意向を無視して大陸に広がり、三井三菱は皇軍の軍事活動を商業面から支え、戦場では「上官の命令は天皇の命令」となった。

 この皇軍の拡大を、一体、誰が喜んでいたのか? 列島内の人間だけではなく、イングランド銀行を中心にした金融ワンワールドの大きな手の中でのことだった。そのとき、同じアジアの仲間であるはずの中国で、この皇軍が、どう見られたか? これはあまりに悲しい。戦争の悲劇は人間を鬼にも悪魔にも変えてしまった。

 ポツダム宣言を受け入れ、天皇裕仁は「人間宣言」しましたが、このあと、何をもって日本国、日本人、日本という文化総体 とするか、あいまいなままになってしまった。
特に、半島や台湾で、日本人として生まれた人たちは、大いに惑います。ロシアに勝った日本がアメリカに負けた。孫文の中華も、朝鮮半島も二つに割れた。 
 いち早く、終戦前後に、朝鮮総督府の高官たちと一緒に列島に引き上げた人は、戦後も、米軍の駐留する中、戦前の「ニッポンジン」の意識を逆に強く持ちました。
 しかし、平和憲法ができると、その平和主義の理想にもえた人も多くいました。
いずれも、アメリカの世界戦略の中での、列島というお花畑のなかでの、権力闘争の分子になりました。しかし、明治に日本国に併合された沖縄では、激しい戦闘の後、米軍の基地の7割が集中するという、米軍の世界戦略の重要拠点となりました。

 今回、東アジアでの戦闘の爪(爪痕ではない)が、消えました。
アメリカ国民に「半島の問題は、お前たちにも関係あるんだぞ」と知らしめる動きが、北のミサイルでした。その上で、何回も日本に対し、「いつまで、アメリカの言いなりでいるのだ」と、国連の場で言ったのです。
 
 私は、今日、北の金正恩が国境をまたぐことで板門店で南北会談が開かれ、それに対し、いち早くトランプの方から祝意が述べられたことに、本当にうれしく思います。事前にそれぞれが、北京を訪問し、習近平に会っていました。
 今回、この一年を振り返ると、今回の「対立から和解へ」という、大きな転換の、その合図になったのは、昨年の9月20日の両陛下による、高麗神社の行幸だったと確信しています。

 そして、その時以来、今日のこの会談に向けて、南北と、そして、アメリカにいる心ある人間とが動き出していた。その仕掛けが2月の平昌オリンピックだった。
 
本来、半島の悲劇の解消は、安倍晋太郎が、こうした舞台を自らの手で用意したかったはずですが、その次男のシンゾーさんは、「美しい日本」と格好をつけても、戦争屋の仕掛けのなかから逃れられず、その周囲には「利権」目当てのお仲間と、「忖度」官僚ばかりだったので、なんら、国際情勢の「潮流」の真意が摘めないままでした。

 昨年9月20日、陛下の高麗神社行幸直後のタイミングで、ワシントンの国連総会で行われたシンゾーさんの演説の様子が、それを物語っています。これは安倍晋三という政治家個人の問題ではなく、メディアを含めた日本社会、特に、いまだに原発再稼働を進めようとする、経済産業省と一体の経済界全体の姿でもあります。

 参考までに、昨年9月20日の出来事に触れた「京の風」を、以下に再掲いたします。

http://www.k2o.co.jp/blog4/2017/09/post-477.phphttp://www.k2o.co.jp/blog4/2017/09/post-477.phphttp://www.k2o.co.jp/blog4/2017/09/post-477.php

 

 

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。