破綻した、日本の隠された「力の政策」。

 今回の地震で、原発事故になったのが、東京電力の福島原発
 一方、同じく今回の被災地域の原発でありながら、事故が起きなかったのが、
 東北電力の女川原発。
 この違いは何か?  両者とも、50Hz。
 日本のエネルギー政策上の観点から、両者の違いを、よくよく考えてみると、
 プルサーマル計画での進捗状況に、違いがあることがわかった。
 福島第一原発では、すでに、プルサーマルが第3号機で稼動が始まっていた。
 その点、女川原発では、東北電力が、
   女川原子力発電所3号機に、2015年(平成27年)度までに導入予定だった。
 ちなみに、現在の日本で稼働中のプルサーマル計画は、
・九州電力 玄海原子力発電所3号機 2009年(平成21年)11月5日より試運転を開始。
                      同年12月2日より、営業運転を開始。
・四国電力 伊方原子力発電所3号機 2010年(平成22年)3月2日より試運転を開始。
                      同年3月30日より、営業運転を開始。
・東京電力 福島第一原子力発電所3号機 2010年(平成22年)9月18日より試運転を開始。
                      同年10月26日より、営業運転を開始。
・関西電力 高浜原子力発電所3号機 2010年(平成22年)12月25日より試運転を開始。 
                2011年(平成23年)1月21日より、営業運転を開始。
日本のプルサーマル計画が注目を集めたのは、「もんじゅ」の事故により高速増殖炉の開発
の見通しが立たなくなったことがきっかけだった。
プルサーマルは、使用済みの核燃料のプルトニウムとウランを使って燃やす技術。
石油枯渇が見込まれる21世紀に、日本が安定的にエネルギー供給を確保する切り札となった。
CO2 による温暖化を大いに宣伝し、世界的に、原子力を復活させる。
アメリカが1979年のスリーマイル事故以降、原子力利用の技術が進まず、日本は、フランス
との競争のみとなっていた。
21世紀に入って911以後、中国を中心に途上国・新興国の資源エネルギー需要が爆発的に増え、
日本がどうエネルギー安定的に確保するか、なかでも電力をどうするか、国家の最重要国策
だった。
太陽熱など、小規模で、分散化の自立自律型のエネルギー体制の考えも取り入れられたが、
主流はあくまでも、これまでの9電力体制と、それを中央官庁が主導する体制を維持すると
いうのが、自民党の政策だった。ここには、産官学の強力な複合体があった。
 ここで、プルサーマルがさらに脚光をあびる。
中国やインドなど、新規に原発を造る国が出てくれば、かならず、核廃棄物が出る。
これを日本が回収することで、恩を売りながら、日本自身はどんどんエネルギー資源を
確保することができる。
日本はすでに青森六ヶ所村にフランスから買い入れたプルトニウムを大量に保管していたが、
これは、将来に、このプルサーマルで利用するためでもあった。
21世紀に入り全世界的に「地球温暖化」が騒がれ、その原因はCO2としてほぼ認知されるや、
途上国や新興国からは、自分達のエネルギー消費拡大を求める声も出され、紛糾した。
そうした状況下、2005年以降、温暖化対策とエネルギー需要の増大の両方に、答えを出すもの
として、「その対策の切り札は、原子力だ」と、日本政府と電力業界はさらに声高になった。
このとき腹のなかには、きっと「自分達にはプルサーマルがある」との思いがあっただろう。
そして、フランスとともに、原発推進の大キャンペーンを展開し、そこにはアメリカも加わった。
日本の重電三社はアメリカ企業と3つのフォーメーションを完成させ、アメリカ国内、そして、
中国、その他に、大いに売り込みにはいった。
当然、このとき、原発の原料であるウランの争奪戦が、ここから展開した。
南アフリカなどアフリカには、フランスがすでに影響力を固めていたが、まだ手付かずのウラン
資源国は北朝鮮であり、ここには、日本、アメリカ、韓国、中国の思惑が錯綜した。
その中で、拉致問題もあれば、金正日の後継問題もあった。
しかし、このとき、日本のみは異なるスタンスだった。これが、さきほどの、腹案だ。
プルサーマルがあれば、原発の資源は、よその国の原発の廃棄物から取り出すことができる。
石油もウランもいずれ、枯渇する。
その点、このプルサーマルさえあれば、他の国の厄介物を、逆に、宝に変えることができる。
この技術は、アメリカはもちろん、フランスもできなかった。それを、日本は実現できる。
日本で、民主党が政権を奪取した2009年9月とは、上記に見るように、最初のプルサーマルが、
九州の玄海原発で、11月に試運転に入るその直前だった。
しかも、日本の原子力技術は、前年の2008年に益川・小林・南部がノーベル物理学賞を受賞する
など、最先端の理論物理に裏打ちされているものとされた。そして、実用化できる夢の技術が、
プルサーマルだった。
しかし、この事態は、覇権国のアメリカから見たら、どう映ったのだろうか?
結論: これは、全世界のエネルギー政策を、地政学的見地で見た場合、
    圧倒的に、日本を優位に立たせる手段になっている。
政治の世界、支配の要諦は、
 「希少資源の権威的分配」
 
 つまり、誰もがほしがるもの(生きるうえで不可欠なもの)を、
  独占できる立場に立つことこそ、権力そのものとなる。
 プルサーマルは新規のエネルギー技術で、日本が今、その技術を実用面でも現実に独占
 しており、そうした国際政治上の「力」を、日本に与えかねない技術でもあったのだ。
 20世紀に覇権を確立したモノ達の目には、きっと、そう映ったに違いない。
アメリカは、20世紀の人類の支配権を決定するものとして、いち早く、エネルギー、その中でも、
石油に目をつけ、この独占体制を国家の地政学的第一目標にした。そのなかに、イスラエルの建国
もあった。そのイスラエルをパレスチナで作り出すために、ヒトラーをバケモノにする勢力もいた。
さらに、戦後、占領した日本国を、いつまでも、東アジアのなかで、自分の手の中から独立させ
ないために、不安定要素として、1969年に尖閣諸島の付近の海底に、原油や天然ガスの存在が
確認されると、1971年7月、密かにキッシンジャーは北京に入り、尖閣の領有権に関し、中国側に、
色気を起こさせる話をした(ようだ)。
いっぽう、今、思うのは、今回の地震が起きる前、すでに、民主党政権になっていたが、
この週のはじまるとき、前原外務大臣が辞任を表明してた。
前原誠司外相の辞任について、マイケル・グリーン元米大統領補佐官は、3月6日、日本経済新聞
の取材で、「各国に失望感を与えるだろう」と述べていた。
アメリカに失望を与えた前原辞任から、一週間後に、地震が起きた。
覇権がかかるときに、国家暴力が発動するが、今回、何か、この次元までかかわる意志が
動いたのか?  これは、わからない。
少なくとも、今回の地震で、日本の原子力政策が、今後、立ち行かなくなるのは間違いない。
世界的に全く信用をなくしたのだ。特に、原子力を扱う管理者として能力に疑問が生じた以上、
もう誰も、技術力はどうであれ、日本の「国家が語る原発関係の言葉」は信用されなくなった。
 それにしても、戦後日本のエネルギー政策は自民党が電事連とともに進めてきたが、この間に、
どれほど多くの対策費名目の資金が、各選挙区に流れたか? 特に、原子力発電の推進では、
莫大な資金が使われた。その到達点が、プルサーマルだった。
今回の地震で、首都東京に電力供給する東京電力がもつプルサーマルである福島第1原発の
3号機が13日爆発した。青森六ヶ所村にはプルトニウム貯蔵庫がある。ここは無事だろうか?

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。