日本は、国家の経営資源を戦略的に使っていない。

 たった今、NHKの特別番組、チャイナ・マネーを見ました。
 外貨準備2兆ドル。 
 国家の中央政府と、中央銀行と、そして、国有企業。
 さらに、中国企業が外国企業をM&Aするための投資会社には、
 国家からの潤沢な資金提供。
 これらが、一つの大きな戦略の下に、一斉に動いてます。
 国内の市場開拓に、人 モノ カネを使うのみならず、
 積極的に海外にある、「金のなる木」を、買いに行っています。
 それは、企業でも、上場資格でも、ブランドでも、技術でもいい。
 どうやったら、国力がより強大になるか、徹底した現状分析のうえに、
 完全にフリーハンドで(過去の柵にとらわれず)、明確な戦略を立てて、
 その上で、 国家の経営資源を、使っています。
 まるで、明治中期の日本です。
 
 今、1985~6年頃、北京に駐在していた当時のことを思い出しました。
 プラザ合意のあとの急激な円高で、日中間の経済が大混乱していたときです。
 中国は、まだ、工業生産力が乏しく、外貨も限られていたときに、
 次に、どんな手を打ったらいいか、当時の趙紫陽首相の直属のブレーンで、
 経済体制改革委員会のまとめ役の人間と親しくなり、毎週、会っていました。
 そのとき、中国の国家の経営資源の分配について、話していたことあります。
 根幹をなす大方針と、経営資源の集中。
 この形は、その当時から、一貫していました。 
 翻って日本。
 時代遅れの旧体制の変換が進まない。
 生存次元のやり直しが、できない。
 一番の理由。
 戦後の日本の国家経営は、 アメリカの繁栄のためにあったから。
 その中で、輸出企業は、ほとんど独自に発展し、今、
 グローバル化の中で、日本社会そのものと、離れだしているから。
 日本社会に、本格的な発展 と 展望を生む には、
 今の日本政府とは別の、まったく新しい統治体を育てるしか、
 もう方策はないのではないか、と、思索を始めています。
 民主党の選挙母体である「連合」の関係者は、
 あくまで、企業活動の中での自分の利権の確保です。
 ゼロから、考えることはできません。
 本来の失業者を、それが表に出ないように、企業内に、国の補助金で
 抱え込ませる方法などは、失業率を下る「数字のまやかし」にとどまらず、
 それ以上に、日本社会の、次の時代への発展の芽を 腐らせているのです。
 日本という国家が、本当に、どれだけの経営資源があるのか、
 まず、ここから、検討を始めないと、日本は再生できませんね。
 それにしても、明治にできた枠組みで、 アメリカ様のご威光を翳して、 
 国家の血を、仲間内だけで吸い続ける体制を作った、<吸血鬼>が、
 この国には、多すぎます。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。