「集団的自衛権」論議の前に、日本国内の土地実情を確認せよ。どれだけ中国企業が押さえているか。

  日本の経済界(特に大企業)は、今、上場した株式の半分以上が外国勢に占められています。経営陣は会社の収益しか見ないから、国境に関係なく、自分にとって都合のいい儲けのネタを、きわめて精緻に追いかけることに熱中します。そして、人件費を削りますが、それ以上に、足元にあるイノチを見ず、心豊かな人材を生み出す、日本の自然や文化環境を簡単に忘れてしまう。

 こうした指摘をすると、大概、以下のような言葉が返ってきます。

 なあに、中国企業なんか、もっとひどいじゃないか。みんなカネをくすねるばかりだ。 上から下まで。

企業の論理は、利益が出ないことはしませんが、では、統治体が目指すものは、何であるべきでしょうか?

企業を支援する。これが、税収だけを目的にすると、企業のわがままに、飲み込まれます。企業の製品開発者やサービス部門には、まともな人もいますが、今の安倍政権を支えるメインは、軍産複合体の人間です。

彼らが日本文化を語ったにしても、伝統の技や知識を上手につまんで器用に商品化で生かすことはあっても、本気で、風土や文化を守ってはいません。

今、日本全国の産土の神社がどうなっているでしょうか? その背後にある鎮守の森がどんどん荒廃し、失われている事実に、安倍の「お仲間」たちは、真剣に心を痛めているでしょうか?

それよりも、企業側は自分たちが海外進出したときに、自社の人間を、なんで日本の自衛隊が助け出すことができないのか? 現地政府から理不尽な要求が出されたときに、軍艦をならべて、いい加減にしないと、実力行使するぞ、と、正当な脅しを利かせられないものか? と考えることが先になってしまいます。 

このとき、アメリカについては、同盟国とはいえ、これまで海外の日本人を守ってくれなかったし、CIAなんか、わざと戦争を引き起こしてばかりいたじゃないか、と。それだから、日本は独自で、地球規模での企業活動を守る安全保障体制も必要なんだと、ロートル経営者は、すぐに考えてしまう。 しかも、そう考える時、そうした体制で、なんとか、自社の軍送品や兵器を売ることはできないか、そればかりに真剣になってしまう。

この人たちは、本当に、日本の郷土、日本文化、なにより、日本人の生命を、守ろうとしているのでしょうか?

今回の集団的自衛権の議論の背景には、世界展開していた米軍の補完機能を日本に持たせたい、というアメリカの要請もあるでしょう。特に、ここでは、資金面と、民生技術の軍事転用での期待が大きいでしょう。 

この声は、安倍が首相に返り咲いた2012年の年末に一番、強かったのでしょうが、今、そのアメリカ自体も変わりつつあります。特に、昨年6月に、最大の懸念事項だった中国との安全保障対話を実現し、そのあとに、アメリカ国内に巣食ってきた戦争屋を、徐々につぶしにかかっているのです。

 しかし、こうした新事態が分からないままで、かえって戦争屋の最後の逃げ場所となって、東アジアに緊張を煽る姿勢になっているのが昨年末からの安倍政権であり、それを押し出しているのが日本版軍産複合体です。

 原発の放射能が全く解決していないのに、ますます中国を刺激して緊張を高めることで、日本国民には、さらに危険要素が高まってしまうことに、無頓着なのです。その種は、すでに日本国内に撒かれています。

 日本の周辺を守るためなら、「集団的自衛権」行使でなく、「個別的自衛権」で十分に対応できますし、海外での平和構築なら、日本の平和憲法を前面に出して、救出専門の組織を、自衛隊とは切り離してつくり、ここに、国家をこえて、各国とも連携する仕組みを提唱すればいい。 

 同盟国のアメリカが、中国との戦争を望んでいないのに、なぜ、急ぐ?

それよりも、日本国内の足元を見てほしい。

耕作放棄地のみならず、水源の近くの森林・雑種地が、どれだけ、中国系企業に買われてしまったことか。

日本の対中強硬姿勢が続けば、中国の国家意思として、そうした企業にどんな指令が出ることになるか?

中国人は、ゲリラ戦と破壊活動だけなら、天下一品であることは歴史が示しています。唐宋時代をピークにして、以後は、美しい「文化」の建設はできなくなってしまい、何でも壊してめちゃくちゃにすることだけは続いてきた。あの国の為政者は面子が保たれているうちは、まだ理性的に動きますが、最後は、先を考えない行為をやりかねない。日本に来た中国人も、平時は良識人でも、ひとたび国家からの指令が出ると、なんでもしてしまいます。家族が国内で人質にとられているからです。

日本国内に、そうした因子がすでに撒かれていることを、自民党や経済界、原発マフィアは知らないのでしょうか?

 中国国内は今、格差の拡大、汚職、環境破壊で混乱が始まっていますが、そうしたカオスの状態でも、権力を維持、機能させるのが、総和としての中国人のしたたかさです。これは、2000年の時間で、政変と内戦を繰り返す中で得られたものです。

 中国政府をつぶすなどと考える前に、日本列島に住む日本人、日本の国土、日本の文化、をどう守るか、このことに、真剣な議論と対策が必要です。すでに、日本列島で暮し、経済実体をもっている外国人とともに、いかにしてこの国土をさらに美しくつくりあげるかを話し合い、相互信頼をはぐくみ、快適な生活環境を実現するか?

 さらに、地球規模での安全保障をいうのなら、同盟国アメリカがもつ巨大な軍事力を、どう使うべきか、このことを、諭すくらいの器量をしめすことが、本来の日本の立場です。 

中国の拡張主義に対しては、アセアンと共に抑えこんでも、中国共産党政府の面子の裏に潜んでいる野蛮な凶暴さを、決して引き出してはならない。

 これは肝に銘じるべきです。 これがわが国の、いまそこにある、本当の安全保障の問題です。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。