根源的紐帯・全一感があったら、そもそも原発は受け付けられない。

大いなるイノチの流れ。

太陽系に、惑星の地球が誕生して、47億年。

その地球に、原初の生命が誕生して、36億年。

直立歩行する哺乳類が現われて、360万年。

そして、現生人類の起源は、20万年前。

私たち人類は、個々の生命体としては母体から生まれて順調に育っても、80歳くらいで、そのイノチを全うします。

その間、配偶者を見つけ、子供を残し、孫の顔を見て、さらに、曾孫まで見ることができれば、

その人の一生は、まことに、幸福なものだったと言えるでしょう。多くの学びがありました。

 戦争、疫病、災害、飢饉は、その人が属する人間社会を壊しますが、

それでも、山野は残ります。イノチの揺籃は残り、まだ、再生できるのです。

 ここまでを、詠っているのが、 中国唐代の詩人杜甫の 「国 破れて、 山河 有り 」。

 しかし、その「山河」まで、根こそぎ壊すのが、原子力発電での放射能です。

エネルギーを取り出した後のゴミは、毒を吐き続けます。

これを、無毒化する技術を、人類は、まだ持っていません。 実用化できていません。

それ以上に、このエネルギーの取り出し技術そのものが、金属特性や構造上では、まだ、不完全です。

 クルマでも電化製品でも、何回も、破損・消耗実験を繰り返し、製品の品質向上を図るのですが、

原子力発電所は、これができない。この点は、京都の平氏(前衆議院議員)が力説してきたことです。

イノチの大きな環から、離れているだけでなく、イノチの環そのものを壊すもの、それが、原子力なのです。

ヒロシマ・ナガサキに、原子爆弾を浴びながらも、 原子力発電を、国策にするときに、

 一役かったマンガが、『鉄腕アトム』 です。 

その作者の手塚治虫は、晩年には、「ガラスの地球を守れ」と、「森の再生」を呼びかけました。

しかし、この原子力を見出し、それを利用している人類に、脱原発へと猛省を促すことはありませんでした。

大都会の電力需要の急増と僻地の地域振興に「原発」を使い続ける愚に、手塚氏はまず最初に気づいても、自分が生み出した『アトム』を否定することに繋がるので、発言を控えたのでしょう。その心は、私たちには想像もできないくらいの苦悩で、いっぱいだったことでしょう。

 『火の鳥』や『ブラックジャック』など、「イノチ」をテーマに、猛烈な勢いで著作を続けたのは、その苦悩から逃れるためでもあったのでしょう。

 発電所など、巨大なパワープラントは、その経営主体に大きな権力を生み出しますが、国家全体を見たとき、そうした存在は、安全保障上、最も脆弱な姿になります。

 そこがやられたら、全て、終わるのです。まして、それが、原子力の場合、イノチの流れを、壊します。

 そのあまりに悲しいまでの現実が、今、おきているのです。この事実を直視しましょう。

原発事故は、1~2年では被曝の被害(内部被曝)は、はっきり出てこないが、4年目以降は、顕著になります。

私たち個々人の個体生命で、生命力とは、実は、各細胞の蘇生力・修復力をさします。これには、遺伝子の情報とともに、つねに、細胞の蘇生に必要な成分が、供給され続けていないといけません。

 国家を一つの生命体として、独立したもの と見るのが、近代国家でした。

しかし、その「国家」とは、もともと、人間の頭の中で生み出した「枠組み」です。日本国も例外ではありません。

鳥や魚や、空気に国境がないように、本来は、地球上では、全てが繋がっているのです。

 自分を起点に、自分が生きるその場にあるイノチとの繋がりを確認し、豊饒を感じ、さらに、それを濃くしていく。

そのときに、エネルギーも自前で作り出す。隣近所やいろんな仲間で、その地や集団に最適な形と規模で。

 これが本来の、知恵ある人間の姿です。

 巨大都市東京と、僻地の福島・新潟を結んだのは、原子力エネルギー と マネー でした。

 これを推進してきたのが、日本の原子力委員なのです。この人たちの知性が、如何に、低次元だったか、がわかります。まして、その広告塔になった全ての文化人・芸能人には、本物のイノチと響きあう感性がなかったことを意味します。まさに、電波芸者でした。

 彼らの発言や表現からは、生命力は伝わってきません。

 近代国家は、マネーとともに発生しています。国家は権力体であり、単なる交換手段だったマネーを、交換とは別に生みつづけ、マネーでの支配力を強めようとします。 カネがないと、生きていけない、と信じ込ませたのです。

 本当の意味での「生きる力」には、国家も、そして、マネーも、要りません。

この二つは、神に対する理解(宗教が教える「神」の概念)と同じく、人間の頭が生み出したもので、それぞれ、単なる情報体系でしかないのです。 私たちが、イノチの流れと離れない、もっと「狂い」のない、快適な情報体系を作り出せば、これらは消えていきます。

しかし、一度出来上がった情報体系で、常に権力を握り、富を奪い続ける立ち場にいる家系がいたのです。

マネーは、時間・空間を越えて、富(人間社会のエネルギー)を蓄積し、また、その富を、現実の豊かさ(快適さ、支配力)に変える手段でもありました。

それゆえに、皆、マネーを求めますが、そのマネーで、何を実現するか、こちらが見えなくなると、マネーは、全く意味を成さなくなります。

 原発がイノチを壊すことを知りながら、マネーを求めたのは、 その人間が、単なる消費奴隷として、洗脳されたからにすぎません。 本人が、本当に、なにを実現したらいいのか、それを、自分に問うこともなく、他者(国家や企業)から、刷り込まれるままに、「欲求」を拡げた結果に過ぎません。

 思考しない人間は、いつだって、奴隷にしかなれないのです。ただ、少し、持ち物がきれいになるだけです。

 近代国家であっても、今までの日本人は、「お上」が敷いたレールを走る消費奴隷だったのです

 ここに対する、真剣な考察と真摯な反省がない限り、 豊かで、伸びやかな未来は開けない。いつまもで、マネーの奴隷になったままです。 

 羊も、牧羊犬も、羊飼いも、マネーの奴隷だと、気づいた人間のみが、

 《 フラワー オブ ライフ 》 を生み出す主体になります。 その人が、私たちの心の友です。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。