東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非にかかわる審査の結論は、
「原子力に関しては専門家よりは市民の直観」 の正しさを改めて想起させます。
最近、福島県関係者と意見交換をする機会をえました。
福島危機の現状は深刻であり、その表面化は時間の問題と思われます。
その背景として福島県庁関係者が深刻に憂慮しているのは、地震、竜巻、落雷、洪水など異常に頻発する天災が福島第一に及ぼす影響です。
確かに竜巻が福島第一を襲うことを想像するだけで戦慄が走ります。
最近特に注目されているのは 著名な原発技師アーニー・ガンダーセン氏が今年4月に警告した数百万のフレコンに入れられた除染放射性廃棄物の自然発火の可能性が 今年4月の福島請戸で発生した山火事により立証されたことです。
落雷によりフレコン内に混ざった草木から発生するメタンガスが発火する可能性も予見されております。
一部国民は福島に重大な関心を寄せており、福島県庁の詳細な報告を真剣に精査して危機感を深めております。
さらに注目されるのは 地震による倒壊が度重ねて警告されている2号機建屋のすぐ脇にある排気筒(120メートル)の問題です。
2013年に地上66メートルの接合部に8カ所で破断や変形が見つかっております。2011年の事故時に起きた建屋の水素爆発などの影響とみられます。
この排気筒では2011年から毎時20シーベルト超えるような高線量が観測されており、今も排気筒の周囲は危険区域となっています。
東京新聞が本年2月影した写真を詳細に分析したところ、地上から四十五メートル付近の支柱に新たな破断が一カ所見つかっております。
元東京電力の社員である桑原豊氏は週刊誌のインタビューに対して、
「心配なのは排気筒の倒壊。中に溜まっている100兆ベクレル以上とされる放射能に汚染された粉じんが、大気中に一気に噴き出します」などと発言。
福島第一原発の排気筒が地震によって崩壊することで、大量の放射性物質が放出されるリスクが指摘されております。
100メートル超の構造物を遠隔操作で解体する工事は前例はなく、東電は福島県の企業が提案した技術を基に装置の開発を進めており、2018年度中に解体の着手を目指すと言われております。
数年前から深刻な危険が指摘されながら、このような悠長な対応では福島県民ならずとも放置できるはずがありません。
危機感に欠ける東電任せにする国の対応が問われます。
一事が万事です。
福島危機の表面化は時間の問題と思われます。
村田光平
(元駐スイス大使)