日本人を思考停止にさせる「建国神話」

こんにちは。

飯山さんに、書かれてしまった。 これは困った(笑)。

さて、昨日は西都原遺跡群、宮崎県立西都原考古博物館、都満神社、都農神社とみたのですが、

頭を抱えてしまいました。

宮崎県では、高千穂での「岩戸開き」と平行し、 古墳群のある「西都原」を、「神々の世界」としています。

ここに、沙穂塚古墳(男女二つの古墳)があるのですが、これを、記紀神話の中に出てくる、 ニニギノミコトと、此花咲耶媛の墓としています。 

西都原は本当に素敵な空間で、菜の花が咲き、桜が開花したばかりでした。この中に、考古博物館があります。

さて、記紀神話の「天孫降臨」の主役は、ご存知のとおり、ニニギミコトですが、これが実話だとして考えた時、一体、いつごろの出来事になるのでしょうか?

戦前の、明治にできた皇国史観だと、神武天皇が奈良の橿原神宮で即位するのは、BC660頃になります。

神武の父親が、ウガヤフキアエズ、 祖父が、ホホデミ。 ニニギは、そのホホデミのさらに父親です。

となると、どうしても、ニニギの降臨は、BC800年とかBC1000年、すなわち、3000年前のことになります。

この年代は中国大陸で殷周革命が起きたり、あるいは、エルサレムのシオンの丘で、古代イスラエルが建国されたときにあたります。 

しかし、ここで問題です。

この西都原の古墳群は、紀元後のAD4~7世紀のものなのです。ニニギとコノハナサクヤの墓である、沙穂塚は、その出土物から、5世紀中ごろ(400年代)のものと確認されているのです。

これでは、記紀神話を解釈した年代と、実際の古墳の考古学的年代では、1000年以上の開きが出てしまいます。こんなことは、小学生の頭でも簡単にできる計算ですから、「どうも、食い違っているぞ」と誰もが瞬時に分かってしまいます。

 その分かった瞬間に、なぜ、そうなったのか、をきちんと考えるべきかどうか、誰もが、迷ってしまいます。

私のように、真実をとことん知りたい人間は別として、 ほとんどの人間は、 ここで思考停止します。

つまり、この西都原での古代遺跡の解釈は、学問的には、全く恥ずかしい事態になっているのですが、それにもかかわらず、このエリアを、「記紀の神話ロマン」として、国内のみならず、海外にまで平気で紹介し、観光の目玉にしているのです。

 「古代は、適当に楽しめばいい。どうせ、ロマンなのだ」

多くの歴史学者が、まさか、こんな風に考えているわけでもないでしょうが、 これでは、まったく、現在の自分に繋がるアイデンティティーが、形成されてきません。 そこらへんに溢れる、いい加減なマンガのストーリーと同じ次元で遊ぶ、幼い精神性のままの人間を大量に作り出していることになっていると、私は考えますが、いかがでしょう。

 これは、この日向(宮崎)から始まった、建国神話(これは8世紀の初めに出来上がった)と、それを基にして、平安期以後、多くの神社や旧跡を作り出し、それを、権威化してきたことに対し、なんら、実証的な検証を進めてこなかったことに、なにも問題を感じてこなかった、という、理性の停滞、もしくは、「特異化」を意味します。

南九州(鹿児島・宮崎)での「天孫降臨」は、実は、 その起源は、BC4世紀のヘブライ人の到着を意味します。しかし、これが、日本としての国家の出発となるには、 AD3世紀の、卑弥呼時代の「東征」の物語を吸収してからです。 このときの卑弥呼は、「東征」の前に、帯方郡に使者を出し、「親魏倭王」になることを望み、「鏡」を貰い受けています。

今回、ここで分かったのは、その時代に加え、さらに、701年に大宝律令ができた後に、日本列島に大きな変化で出たことでした。 国名は、倭国から、日本国になり、このとき、武則天(則天武后)からは、大量の「海獣葡萄鏡」を与えられているのですが、それが、志布志にある山宮神社に天智を祭ると同時に、納められていたのです。

それが、さらに、奈良に東大寺ができるときに、今度は、国産の海獣葡萄鏡が作られているのです。しかも、そこには、ある工夫をして。

今、日本の取り巻く、アイデンティテイー形成の環境は、 「ロマン」なんて言葉で、遊んでいられるような事態では、完全になくなっています。

 

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。