環境負荷の低い省エネルギー都市「スマートコミュニティ」が世界的に注目されている。
これは当然だが、ここでの人間の『意識のありかた』、さらに『暮らしぶり』は、どうなるのか?
国に資金を出させ、ハードだけを業界が提案した技術スペックできめて提供するのか?
そうではない。
自然に溶け込んで、自分で自分の生きる現場、ふるさとを創り、そこに自律・自立しているのが、
今後の未来像。
スマートコミュニテーを、新たな高級住宅地として売り出して、カネを儲けようとしているの
なら、それは、けっして「スマート」ではない。
「スマート」とは、科学技術に支えられた、自然と響きあう「コモンズ(=共同体)」、つまり、
新世紀の「結(ゆい)」の実現であり、そこに生きる個々人が自覚して、自分で自分の未来を設計
し、主体的に運営していく実態が伴わなければ、なんら意味がない。
新しい売り物、それも、国にカネを出させる旧来型の公共事業システムの中で、新規モデルにしよう
と考えているなら、これは、まったく、過去のハコモノ行政とその出入り業者と同じ発想だ。。
肝心なのは、住民自身が自分の未来像を考え、個々人の労務の提供とサービス享受という運営
ルールまで視野に入れて、ハード面で採用する技術スペックを自分たちできめること。
ただし、「規格」に関しては世界で統一したほうが、利便性が高まり、災害にも強くなる。
以下は、東芝が、スマートコミュニテーィ向けの技術を持つ会社を買収したニュース。
企業活動を統合する意思と視点が、住民に不可欠だ。
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《東芝のランディス買収で進む 経産省の日の丸製造業復活構想》
ダイヤモンド・オンライン 6月24日(金)14時3分配信
「パナソニックやトヨタ自動車が興味を示しており、日本の製造業復活のきっかけとしたい」
経済産業省幹部は期待を込めて語る。
両社が興味を示しているのは、東芝が5月に買収することを決めたスイスのランディス・ギア社と、
この案件に追加出資を決めている産業革新機構の動きだ。現在、機構は追加出資比率など最終
的な調整をしているが、50%弱で検討している模様だ。
機構は投資ファンドとしての性格があるためエグジット(出口)戦略、すなわち資金回収の
青写真が重要だ。そして、機構の持ち分の一部を引き受けるエグジット先として浮上しているの
が、パナソニックとトヨタだというのだ。
ランディスはスマートメーター製造とシステム構築で豊富な実績を持つ。太陽光や風力発電、
蓄電池などを街に配置し、環境負荷の低い省エネルギー都市「スマートコミュニティ」が世界
的に注目されているが、スマートメーターはその都市に住む各世帯に必ず設置される。
電力やガス、水道などの利用状況のデータを収集し制御する機械で、スマートコミュニティの
肝である。
そのスマートメーターの世界シェア36%(2009年、米データモニター社)で世界首位を走る
ランディスを東芝が手中にしたことで、経産省が描いていた、世界中のスマートコミュニティ
構築事業を日本企業連合で受注し、それを日本の製造業復活のきっかけとするという構想が
具体化へ大きく前進したのだ。
パナソニックは、機構のエグジット先として検討していることについて 「そのような事実は
まったくない」としているが、関係者は「パナソニック側からこの件に関して興味を示して経産
省を訪れ、情報収集をしている」と話す。
スマートコミュニティ事業では、太陽光発電システムや家庭用蓄電池、電気自動車などが都市
計画の中で重要な要素として登場する。パナソニックは省エネ家電のほか、グループ会社の三洋
電機で太陽電池や蓄電池の拡販を今後の成長のカギとしている。トヨタにおいてはプラグイン
ハイブリッド車だ。
両社とも経産省の構想とも合致する東芝・ランディス連合にかかわるメリットは大いに見込め
そうなのだ。
さらに、現在、NIST(米国国立標準技術研究所)などを中心にスマートコミュニティを
構成する技術の国際標準化の議論が進められており、ランディスは主要メーカーとして、その
議論の中心にいる。国際標準化の波に乗り遅れないためにも、他の日本企業は東芝・ランディス
連合との距離を縮めておきたいところなのである。
そしてなにより、原発インフラ輸出の先行きが震災で見えなくなった今、経産省にとって
東芝・ランディス連合は製造業復活の光明でもある。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
「スマートコミュニティー」(ハード・テクノロジー)はいいが、その前に、「完結した暮らし方モデル」(ソフト・コンテンツ)と、建設資金を民間主導で集める知恵が必要だ。
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この記事を書いた人
新井信介
1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。