<中国経済は破綻したあの会社の構図に似ている-Wペセック>
Buzzurl 6月3日(ブルームバーグ):
格付け引き下げは興味をそそる反応を引き出すことがある。
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、1月27日に日本の格付けを中国と
同じ水準に引き下げた。日本が反発するものと私は思ったが、不満を示したのは中国だった。
10%成長を実現し、外貨準備が3兆ドル(約240兆円)に上る中国が、首相が毎年代わって
高齢化が進む過剰債務国の日本と同じ「AA-」より高い格付けを獲得できないことに、私が
会った全ての中国当局者がいら立っていた。
中国は最上級格付けの米国を上回る水準に値すると考える中国人も多い。
しかし、こうした見方には興味をかき立てられるが、正しくない。インフレの脅威拡大に中国
が格闘していることで、信用リスクは明らかに高まっている。インフレ対策は中国の信用と世
界経済にとって、市場の認識を超えるリスクをもたらしている。
景気が冷え込んで初めて、2008年の4兆元(約50兆円)規模の景気刺激策の本当の代償
が分かる-。
ここ数年、エコノミストや格付け会社はこんなことを口にしている。とはいえ、中国は巧みな対
応でリセッション(景気後退)を回避した。米金融業界の混乱や欧州の債務危機、日本のデフレ
をもってしても、ナンバー1を目指す中国のスケジュールに狂いを生じさせていない。
成功の秘訣
中国の成功の秘訣(ひけつ)は何かと言えば、公表されていない膨大な累積債務だ。中国全
土に散らばる20都市が、国際空港や超高層ビル、5つ星のホテル、6車線の高速道路、世界
水準の大学、プラダの店舗、メルセデスベンツのショールーム、広い住宅を欲している。
こうした建設ブームが、中央政府の監視が届かない甘い与信と自治体の債券発行で資金が
賄われる形で静かに進行している。自治体向け銀行融資の急増は銀行の破綻連鎖につながり、
経済成長の足かせとなりかねない。規模を特定しにくい自治体債務の急増は国中でのデフォルト
(債務不履行)リスクを高め、自治体を救済する必要があるのかという厄介な問い掛けを中央
政府に投げ掛けている。
中国の市・省は銀行から直接資金を借りられないため、規制をかいくぐって8000余りの投資
会社を設立している。格付け会社フィッチ・レーティングスは、こうした投資会社や不動産開発
業者への融資を背景に、中国の銀行の不良債権が融資の3割に上る恐れがあると警告している。
住宅建設計画
それだけではない。中国では危機後の再生計画として、2015年までに低価格住宅3600万戸
の建設を予定している。これは自治体の借り入れを12年までに2兆元増やすことになるとみ
られる。
銀行が慌てて自治体向け融資の規模を隠そうとして、負債を簿外で処理しようとすれば、それは
まるで破綻した米エネルギー会社エンロンのようだ。
全てが崩壊するとは考えにくい。中国は外貨準備が世界最大で、しかも計画経済だ。
こうした状況もかつて経験済みだ。1990年代後半、政府が後押しした融資の不良債権が拡大す
る事態に見舞われ、政府はその処理に6500億ドル強を投じた。
インフレの脅威
ただし今回のリスクはもっと大きい。3月のインフレ率は5.4%と、08年7月以来の高水準に
達し、実際はもっと高いとアナリストらがみているほどだ。発展度合いが中国のレベルで、繁栄
を約束することで国民をなだめている国にとって、5%の伸びは危機といえる。
日本が過去25年間に経験した浮沈の道のりは絶対に避けなければならないことを中国は理解
している。もちろん、日本と中国の政府には見逃せない違いがある。日本は政治がまひ状態に
あるが、
中国の政治はトップダウン形式で、胡錦濤国家主席と温家宝首相は経済のかじ取りへの裁量
が極めて大きい。
不良債権は中国にとって避けられない問題だ。ほとんどの途上国はある時点でこうした問題を
抱える。問題はその規模だ。中央政府の課題にすぎないのか、あるいは国全体を破滅状態に陥ら
せるものなのか。
経済が永久に順調に成長する国はない。中国がブレーキをかければ、世界中で連鎖反応が起きる
かもしれないし、それが必ずしも事態の好転につながるとは限らない。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの
内容は同氏自身の見解です)
更新日時: 2011/06/03 14:45 JST
来年は、中国経済も破綻するぞ。ブルームバーグ記事は必見。
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この記事を書いた人
新井信介
1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。