常楽寺に蛍が舞っています。夢窓さんもきっと見ていたはず。

 今、午後8時30分。
 たった今、次男と一緒に、ホタルを見てきました。
 場所は、中野市東山の常楽寺の南側で、我が家から歩いて5分のところです。
 常楽寺は、夢窓疎石(むそうそせき)が若いときに修行したところです。
 この人物は、実は、中国南宋の最後の皇帝でした。
 まだ6歳のときにフビライの軍勢におわれて、日本に亡命したあと、
 伊勢で養父母に育てられていたのですが、一時、この中野に来たことがありました。
 夢窓が成人したときの京の都は南北朝の混乱で荒れ果てていて、それに心を痛め、
 一日も早い平安を望んで、足利尊氏に、いち早く室町幕府を開かせました。
 そして、吉野で崩御した後醍醐天皇を厚く弔いました。それが京都の天龍寺です。
 夢窓は京都の貴族からは、その血脈と豊富な仏教知識から大変、慕われたのですが、
 親友に花園天皇が師と仰ぐ、宗峰妙超(しゅうほうみょうちょう)がいました。
 花園天皇が上皇になり、さらに仏門に入ると決意したときに、すでに宗峰は臨終間際
 だったのですが、「師の亡き後、自分は誰に法を問えばよいか」と尋ねました。
 そのとき、この中野生まれの高弟の関山慧玄(かんざんえげん1277-1360)を推挙しました。
 
 夢窓は、宗峰の親友として、関山が開らいた妙心寺の様子を見にいくのですが、
 関山の全く飾らないさまで、しっかりと心とイノチの本質と向き合っている姿に、
 妙心寺の将来の発展を予感したことが、伝えられてます。
 夢窓も関山も、若かりし時に、この東山の蛍を、きっと見ていたことでしょう。
 そう思うと、ここでみる蛍の白い光は、さらに透き通って心に響いてきました。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。