映画「2012」を観た。中国が味方になった。

昨日、映画「2012」を観てきました。
 これまで観た映画 と、比較するといろんなことが分かります。
 参考にするのは、 「インディペンデンス・デイ」、「ディープ・インパクト」、 
 そして、「マトリックス」に、「ターミネーター4」、 
 さらに、「OO7」に、「ミッション・インポシブル」。
 これらには、本欄で、コメントしたことがあります。
 アメリカ文化の中で、ハリウッド映画は、戦後のアメリカ覇権の
 プレゼンス(存在価値、影響力、自己表明)そのものです。
 この中で、今回の映画は、初めて、特定の「敵」がいない映画でした。
 そして、人類として、その逃れられない運命に対し、一部の人間の
 生存をテーマにした、人間ドラマでした。
① 危機の設定と、ストーリー。
 「2012」に似た設定のものに、日本映画の「復活の日」や、
 核爆発を扱った「ザデイ・アフター」が、あるのですが、 
 これらは、文明の破滅の原因は、人類が作ったとするものでした。
 しかし、今回の「2012」は、人類の営みの次元を超えているのです。
 2010年から、惑星直列で太陽から降り注ぐニュートリノが強まり、
 地球のマントルを刺激し、地球の地殻のすぐ下の温度が急上昇し、
 アメリカ西海岸から、M10クラスの地震と、数100メートルの高さの津波が続き、
 さらに、2012年冬至には極移動が起きて、未曾有の大洪水に見舞われる。
 そのとき、地上で、津波や洪水から免れる場所は、わずかにチベット高原のみで、
 そこで、急遽、未来に向けた、人類の復活のための「船」が、建設される。
 
 この危機を見つけたのがインドの科学者で、それを知った友人のアメリカ人科学者、
 この人物は黒人ですが、着の身着のままでアメリカに戻り、同じく黒人のアメリカ
 大統領に遮二無二会って、その事実を伝える。 それは、トップシークレットとなり、
 アメリカ政府は、密かに世界各国(ここでは「G8」でしたが)首脳に連絡し、
 全員の賛同を取り付け、世界各地で、次々異常現象がおき続ける中、この「船」
 の建造を、極秘に始めます。
 
 秘密裏に建造される、この「船」の存在と、その乗船券「100億ユーロ」は、
 一部の人間のみに、知らされ、販売されていた。
 こうした事態を、海中に沈んだ「古代大陸アトランティス」を書いた作家が、
 突き止め、家族とともに、数々の危機を乗り越え、チベットで建造されている
 この「船」に乗り込んで、人類復活の「種」になる、という、ストーリーです。
 その作家の子供で、離婚した妻の元にいた少年の名前が「ノア」です。
 脚本家やプロデューサーは、4000年前にあったとされる大洪水と、
 そのときの 「ノアの箱舟」 を意識しているのは、当然です。
② そもそも、ありえる話か?
 最後の津波の高さは、映画の中で、5000メートルに達するレベルに描いています。
 これは、確かに、通常の四季をもたらす、自然現象ではありえないレベルです。
 私たちは、温暖化を気にしたり、あるいは、地殻の激突現象での地震に備えますが、
 そんなもの、お話になりません。
 もし、こうした事態が、本当にこの3年後にくるのなら、すべての営みは、無駄です。
 
 ただ、今、宇宙ステーションの建造を急いでいるようにも見えますから、
 本当に、そうなるかもしれないと、勘違いする人間も出てきてしまうでしょう。
 実際には、100~200メートルの高さの津波は、今後、起こりうるM8クラスの地震でも
 十分にありえることですが、 5000メートルはないでしょう。
③ 世界政府(秘密政府)の扱い について
 今回の映画で、面白かったのは、 こうした危機を知り、その対策のための「船」を
 建造する人たちの存在です。特に、 その中心にいるのが、黒人の科学者です。
 高校時代に、彼女も作らずに、2000冊の本を読んでいた青年でした。
 彼の人間性が、全編を貫いています。
  最後の大洪水が迫るとき、 それに乗ろうと、押しかける人間を、拒否する、
 『船』建造の主導部の人間に対し、 
  「自分たちがこの船に乗って再出発するときに、すぐ目の前にいる同胞を
   切り捨てる、見捨てるという判断で、新しい世界を始めていいのか。
   お互いを助け出す、という判断で、始めなくていいのか」 と、心から訴えます。
  この危機を発見した、インドの友人は、すでに大津波にのみこまれています。
  彼の主張を、世界の首脳が支持します。
④ 中国の扱い。
 チベットの奥の「船」の建設現場に、 首脳たちが、到達したときに、
 言った言葉。
 「さすが、中国だ」
 これは、本当に、驚きです。
 「007」のゴールド・フィンガー では、 FRBのフォートノックスの金塊を
 核で放射能汚染をさせるのに、加担するのが、中国の人民解放軍でした。
 4年前の「ミッション・インポシブル」では、 中国は、世界的な武器商人を
 匿う国でした。
 それが、今回は、
 人類の希望の「船」を、時間通りに、作り上げた国となっているのです。
 もちろん、設計図や技術者は、世界中から英知が結集したのでしょうが、
 それを、国家の極秘指令として、やり遂げたとしているのです。
 中国が、今の、資本主義、あるいは、戦後のアメリカ覇権=ドルによる経済体制に
 必要不可欠な国。 それ以上に、救世主である、とも言っているようです。
 これは、劇中で、「G8」といっていますから、脚本ができたのは、
 サブプラ破綻のまえです。 きっと、北京オリンピックの前。
 それも、四川の地震や、チベット独立騒動のあった、昨年3月の前です。
 
 今は、スペクタル映画は、 CGグラフィックで、すぐにできますから、
 この2年間で、急遽、作ったのでしょう。 最後の最後の「洗脳」 です。
 それにしても、今の世界経済、中国と、インドがなくては、回りません。
 以下のニュースは、現実の話です。
 日経ネットニュースです。
(12/4)GMインド事業 上海汽車、株式の半数取得へ  【上海=下原口徹】
中国自動車最大手の上海汽車集団は米ゼネラル・モーターズ(GM)のインド事業に参画する。
国営新華社系の中国証券報などによると、上海汽車がGMのインド事業の半分の株式を取得
する見通し。一方、上海汽車はGMとの合弁の上汽通用五菱汽車(広西チワン族自治区)の
持ち株をGMに一部売却する。中国での提携関係を成長が期待されるインドにも拡大する。
 上海証券取引所に上場している上海汽車の株式は3日から取引停止となっており、同社は
「重大な資産組み替えを計画しており、投資家への影響を避けるため」とのコメントを発表した。
上海汽車、GMとも資産組み替えに関する具体的なコメントはしていない。 上海汽車とGMが
折半出資する上海GMについても、GMが保有株式の1%を上海汽車に売却するとの情報もある。
 GMのインド現地法人と上汽通用五菱汽車はともに小型車が主力。インドでも合弁で生産した
方が事業効率が高まると判断したとみられる。上汽通用五菱汽車は地元政府のほか、上海汽
車側が50.1%、GMが34%の株式を保有。
  ・・・・・・・・・・・・・・・ 転載終わり・・・・・・
追記:  以上を見て、「さすが、中国だ」、に同調する人もいるでしょうし、
     それ以上に、「やっぱり、中国だな」、と考える人が、多いかもしれません。
   しかし、それは単に、これまでの資本主義のあり方を延命するときの
   視点での評価です。
   私は、断言します。
   これからの、3年間で、
   今までの、中央銀行が発行する「通貨」に替わる、
   新しい<価値媒体>が、 この人類社会で、どんどん、出てきます。
   彼ら(世界政府)には、まだ、それが見えないでしょう。
   もちろん、カネに狂っている、中国人にも。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。