お奨めDVD。中国TVドラマ『大唐双龍伝』。小野妹子(遣隋使)帰国後の中国大陸が舞台。

実は、昨日一日、「華流」のテレビドラマに嵌っていました。 見たのは、『大唐双龍伝』。
当初の目的は、「聖徳太子」が活躍していた時代の中国を、中国のテレビが、どう描いているかを知るためでした。
 このドラマの時代背景は、隋末から唐の成立までです。 この中で、607年に隋に行った小野妹子は出てきませんでした。そして、611年に煬帝が進めた高句麗遠征にも触れていません。この遠征は陸路で行った35万人のほとんどが死ぬという大敗北でした。
 どちらも、きちんと、隋書に書かれている、間違いのない事実なのですが。
元々、中国に限らず、テレビドラマは娯楽、エンターテイメントです。ですから、物語の展開を楽しむ要素が多くなるのですが、ここには海外との関係は出てきません。もっぱら、隋の皇帝楊広(煬帝)と、その家臣でありながら皇帝位を狙う宇文化及、さらに、自分の父、李淵を隋から離反させて蜂起を促し、皇帝にさせようとする李世民が出てきます。
題名の「双龍」とは、揚州生まれのコソ泥だった二人の若者のことです。この若者たちが成長していく過程で、この激動の時代の様子を描きます。そこには、中国ドラマや中国映画で、お定まりの 復讐(仇討ち)劇 と、武林(特殊な拳法)が出てきます。
私がこのドラマを見て、またまた中国人気質を学びました。これは日本では、たとえドラマでも絶対にないことだと感じたことがあります。 天皇の存在と、皇帝の存在の違いからきます。
 それは、以下の様なセリフになってでてきます。
若者二人が、李世民から自分の幕下に加わる様に求められるとき、「李家は皇帝を出して天下を治めるので、お前たちは、今から加われば、そのときは功臣として、十分な待遇を得られるぞ」といわれると、
 「功臣と言ったって、お前の犬じゃないか。」
旅先で友人になった人間が、それぞれ、隋に忠誠を尽くそうとするか、瓦崗の反乱軍に行くか、それとも、次の皇帝位を狙う人間に従おうとするか、というとき、
 「人には、それぞれの志(こころざし)があるのです。」
そして、極めつけは、宇文化及のこの言葉。
 「だから、私は誰の指図も受けたくなかった。それには、皇帝になるしかない。」
中国文化圏の人間は、誰もが、自分が皇帝、すなわち、人間世界の支配者=ルーラーになれると考えます。
このことは、自分自身を、既存の人間社会を覆す龍になれる と認識するものです。
で、このドラマを、私は、まだ最後まで見ていないのですが(ツタヤにまだ出ていなかった)、
気に入った言葉があります。 
主人公の若者の一人が、李世民の妹と恋に落ちます。純粋な気持ちで相思相愛になったのですが、彼女には、許婚がいて、結婚を拒んでいた。それが、その若者の活躍で、李家が、煬帝を殺した宇文化及に対する討伐という名目で、軍を動かせる段になると、
「あなたは、李家にとって十分に功績を上げ、名前も知れ渡りました。今、李家の臣下になるのなら、兄も結婚を認めてくれるでしょう」 というと、
「なんでも、すぐに、取引きの対象にするのか。人間の心(感情)までも、そうするのか」
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まあ、みなさん、とにかく見てください。面白いから。ハチャメチャのところもあるけど。
このドラマの時代のとき、日本では斑鳩に法隆寺ができ、広隆寺には弥勒菩薩が据えられたのです。そして、中国大陸では当たり前のように、ワイロとして銀が配られていました。もちろん、日本には、このとき、マネーがありませんでした。
そして、日本で、聖徳太子以前のドラマが、なかなか描けない理由が分かりました。天皇の問題です。 倭国の大王は、本質的に天皇と違うからです。
「天皇」という権威が確立している中でしか、権力闘争を語ることができない人間、それが日本人だからです。
私は今、自分自身が、そうした日本人を根本から変える作業に挑戦しているのだ、と気づいた次第です。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。