訳の分からない法律が通りましたが、この法案がもつ政治状況については、東洋経済の泉宏氏の記事を必ず読んでおきましょう。
安倍の退陣は、戦争屋カバルの崩壊のみならず、新規のマネー(合成覇権通貨)への移行の入り口(狼煙)と、完全に同期しています。何らかの演出(政治的な「大転換を指し示す事態」の発生)が、検討されているでしょう。
以下全文掲載(泉 宏 氏に感謝)2020/03/13 07:10
<東京五輪中止論浮上で追い詰められる安倍首相 … 消費税引き下げ浮上、中止なら安倍退陣必至>
世界保健機関(WHO)がパンデミック宣言を出した新型コロナウイルスの感染拡大により、アメリカの株式市場は暴落。「世界恐慌」の様相を呈してきた。
コロナ対応に苦闘する安倍晋三首相に、東京五輪・パラリンピック開催の中止・延期論が浮上し、政権運営が根底から揺らぐような状況に追い詰められている。
五輪中止なら安倍退陣は必至
国民的イベントである選抜高校野球大会は3月11日に中止が決まった。大会中止は戦中・戦後の中断期間を除いて初めてのことで、プロ野球やサッカーJリーグも開幕延期となった。
まさにスポーツ界に非常事態宣言が下される中、その延長線上に急浮上したのが東京五輪・パラリンピックの中止・延期論だ。中止ともなれば日本経済への打撃は計り知れず、アベノミクスの崩壊にも直結する。
安倍首相にとっての「史上最長政権のレガシー(政治的遺産)」も消滅しかねず、政界では「五輪中止なら首相退陣必至」との声が広がる。
新型コロナウイルスの感染拡大当初は、「桜を見る会や東京高検検事長の定年延長などへの政権批判から国民の目をそらせ、コロナ対応に全力投球することで首相の指導力アピールにもつながる」(官邸筋)との楽観論もあった。しかし、事態がここまで深刻化すると、「もはやコロナは政権の神風ではなく、とんでもない疫病神」(自民幹部)となりつつある。
安倍首相が唐突に打ち出した2月27日の全国休校要請という政治決断についても、「結果的に日本社会特有の同調圧力によって、あらゆるイベントなどの総自粛につながり、日本経済がリーマンショックを超える窮状に陥る引き金ともなった」(経済界有力者)との指摘もある。
そうした中、政界が注目するのが、「東京五輪中止・延期の可能性と、その場合の安倍政権への打撃度」(自民幹部)だ。最新のNHK調査などでは、全国休校要請や感染拡大国からの入国制限を支持する声は多数派を占め、首相サイドが恐れる内閣支持率急落への防波堤になっているようにもみえる。
その一方、東京五輪の中止を予想する「悲観論」が、開催を熱望する「楽観論」を上回る状況となりつつある。
陰の立役者の「爆弾発言」
その中で11日に飛び出したのが、五輪組織委員会の高橋治之理事(元電通専務)の「大会を1~2年後の夏に延期するプランを考えるべきだ」との爆弾発言だ。高橋氏は東京五輪誘致の「陰の立役者の1人」とされる組織委の有力者だけに、物議を醸したのも当然だ。
高橋氏は個人的見解として、「(コロナ対応で)日本が大丈夫ならそれで開催できるわけではない」としたうえで、「(延期する場合)2年後の夏が、いちばん可能性がある」と指摘した。その一方で、中止の可能性については「ありえない。IOC(国際オリンピック委員会)の財政が危うくなる」とも力説した。
この発言について、組織委会長の森喜朗元首相は「大事な時期に軽率なことをおっしゃった」と不快感を示し、「電話で高橋氏から『口が滑って申し訳ない』との謝罪があった」として、「今、計画を変えることはまったく考えていない」と延期の可能性を否定した。
ただ、高橋氏はその後のメディアの取材に対し「(3月下旬に予定される)次の理事会で延期の検討を提案したい」と語ったとされ、騒ぎはなお収まりそうもない。
延期論は、橋本聖子五輪担当相が3月3日の国会で「IOCとの契約では年内なら延期は可能」と答弁したことで大騒ぎとなったばかりだ。その頃から自民党内でも五輪中止への危機感が広がり、鈴木俊一総務会長が「その場合はすぐ責任論が持ち上がる」と指摘するなど、政権の命運にもかかわる事態との認識が広がっていた。
コロナ対応を指揮するWHOのテドロス事務局長は現地時間の11日、「コロナウイルスによる史上初のパンデミック(世界的流行)だ」と深刻な表情で語った。WHOがパンデミックを宣言するのは2009年の新型インフルエンザ以来11年ぶりのこと。安倍首相は12日午前、「これまで以上に国際社会と協力しながら対応を強めていきたい」とあくまで平静を装った。
安倍首相は「政権を投げ出す」との声も
ただ、WHOのパンデミック宣言によって世界的な不安拡大は避けられない。「今後も感染拡大が続けば、各国が五輪参加を躊躇し、国際的に中止や延期論の流れが加速するのは当然の成り行き」(外務省筋)でもある。
そこで問題となるのが安倍首相の政権運営への影響だ。今のところ日本での感染拡大は「何とか(爆発的感染を)こらえている」(専門家会議)とされる。しかし、安倍首相らの言う「瀬戸際の1~2週間」が長引き、3月下旬以降も収束のメドが立たなければ、五輪中止論も勢いを増してくる。
永田町でも「日本にとっての決断のタイムリミットは5月の連休前」(自民幹部)との声が大勢だ。仮に感染拡大を抑制できないことが原因で五輪の中止や延期となれば、「『政治は結果責任』と繰り返してきた首相の責任論は免れない」(閣僚経験者)ことになる。与党内でも「安倍首相が政権を投げ出す可能性は否定できない。その場合、6月中旬の国会閉幕時が退陣表明のタイミングとなるのでは」(自民長老)との声も出始めている。
一方、国内の感染拡大防止に成功し、世界各国の感染拡大で結果的に五輪中止・延期となったケースでは、「首相の責任論は避けられる」(周辺)との見方が出る。その場合でも日本経済への打撃は深刻だが、「パンデミックはいつかは収まる。そのときのために大胆な経済対策を打ち出せば、首相の求心力は維持できる」(自民幹部)というわけだ。
自民党内ではすでに「五輪開催が中止か延期となった場合には、半年か1年間に限定した消費税の5%への引き下げを打ち出すべきだ」(若手)との具体案も浮上している。「次期衆院選をにらむ野党側が消費税引き下げで足並みをそろえても、与党が引き下げを打ち出せば、衆院を解散しても野党の攻撃をかわせる」(自民選対)という策謀でもある。
もちろん、「こうしたシミュレーションは、文字どおりの机上の空論」(自民長老)と揶揄する向きも多い。首相サイドも「コロナショックで年内解散論も吹き飛びつつある。感染が本格的に収束しなければ選挙ができるはずもない」(周辺)と苦笑する。
いつまでも「瀬戸際」が続く可能性も
コロナ対応を協議する政府の専門家会議は3月19日に感染拡大の状況を判断する方針だ。今のところ、新たな感染者数が急増した日はなく、1日当たり数十人程度で推移している。
専門家会議のメンバーの1人は「感染が急拡大しないのは、我慢強くて清潔好きという日本特有の国民意識が主要因」と指摘するが、専門家会議の有力者は「いつまで持ちこたえられるかわからない」と不安を隠さない。19日になっても踏み込んだ判断を示せず、「いつまでたっても瀬戸際が続く状況」(医療関係議員)も想定されている。
そうした中、コロナ対応での緊急事態宣言を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案は13日中に参院本会議で成立し、14日にも施行される見通しだ。ただ、安倍首相による緊急事態宣言は「実際は抜けない伝家の宝刀」(政府筋)とみられている。「全国的かつ急速な蔓延により国民生活に甚大な影響が及ぶ」との判断基準を満たす状況となれば「まさに日本のパンデミック」(自民若手)となり、「宣言した途端、東京五輪は中止か延期とせざるをえない」(閣僚経験者)からだ。
干支でみると、12年に1回やってくる子年は、安倍首相の祖父の岸信介元首相(故人)が退陣した1960年以降、中曽根内閣時代(1984年)を除いていずれも首相が交代している。しかも、日本で夏季か冬季の五輪開催の年は、3回とも首相が退陣している。
不吉なジンクスを乗り越えられるかどうかは、これから50日前後で決まるだけに、連日コロナ対応を指揮する安倍首相の表情も深刻さが増すばかりだ。