村田先生から以下のメールがありました。
《歴史の法則の具体化》
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皆様
データ・マックス社出版の経営情報誌「I・B TOKYO」に掲載予定の私のインタビュー記事の第3回分及び第4回分をお届けいたします。
1.第3回分
汚染水の海洋放出は海洋環境を汚染し漁業者に大きな影響
とくに最近注目されている問題の1つに放射能で汚染された水「汚染水」(放射性物質トリチウムを含む)があります。東京電力は溶けた核燃料を冷やすために、毎日数百トンの水を原子炉に入れています。また、山側から海側に流れている地下水が原子炉建屋に流れ込んでいます。これらの水は高濃度の放射能汚染水になっています。福島第一原発の敷地内には、汚染水が溜まり続けており、合計で100万トンを超えています。昨年、9月10日の原田義昭環境大臣の発言「(海に)放出して希釈するしか方法がない」が国内外で大きな波紋を呼んだことは読者の皆さまの記憶にも新しいことだと思います。
(村田 光平 氏)
今、汚染水の処理は、セシウムとストロンチウムを分離、その後、多核種除去設備(ALPS)で、トリチウム以外の62種類の放射能を分離することになっていますが、2018年9月の東電の報告ではALPSで処理した水のうち、84%が基準を満たしていなかったことがわかっています。また、ALPSでは除去されない、トリチウムは半減期が12年と長く、長期にわたって環境を破壊します。そのトリチウムの危険性は、小柴昌俊先生(ノーベル物理学賞受賞者)や長谷川晃先生(元米国物理学会・プラズマ部会長)などによってすでに指摘されています。国は、海洋への放出を有力な選択肢として検討していますが、それは許されることではありません。汚染水の海洋放出は、海洋環境を汚染し、漁業者に大きな影響を与えることは明確です。地球環境加害国の汚名すら免れません。
「東京五輪は詐欺商品である」という声が、国内外から
――それにしても、「東京五輪」は、準備を開始した当初から現在に至るまで、途切れることなく、さまざまなトラブルを重ねてきています。
村田 13年9月のブエノスアイレスで開かれたIOC総会で20年の五輪開催地が東京に決定してから約7年、東京五輪はトラブルだらけといえます。最初のトラブルは誘致演説で安倍首相が「(福島第一原発)状況は完全にコントロールされている」と虚偽の発言をしたことに発します。その後、建設費疑惑で「新国立競技場」のコンペが白紙に戻り(15年7月)、デザインの盗用疑惑で「エンブレム」も白紙撤回されました(15年9月)。当初7,000億でできる(世界一コンパクトな大会にする)とされていた開催費用は、現在では3兆円を超えるまでに膨らみました。フランス検察当局の手で招致にともなうJOCの不正献金疑惑が明るみに出て、竹田恒和会長が退任しました(19年6月)。同事件関連では、ブラジル・オリンピック委員会(BOC)のカルロス・ヌズマン会長が逮捕されました。さらに東京の極暑対策にIOCトーマス・バッハ会長が懸念を示し、マラソンと競歩のコースを札幌に変更しました(19年11月)。今や、「東京五輪は詐欺商品である」という声が国内外の有識者から、私の耳にも届くようになりました。
(つづく)
2.第4回分
「天網恢恢疎にして漏らさず」~最終的には東京五輪は中止?(4)
村田 光平 氏
倫理と連帯に立脚し、環境と未来の世代の利益を尊重する
――先生の約20年前に書かれた名著2冊が、最近相次いで電子書籍化され、アマゾンの人気ランキング上位に顔を出し、多くの読者に読まれています。
村田 1作目の『新しい文明の提唱-未来の世代へ捧げる-』(文芸社)は2000年に出版され19年に電子書籍化されました。多くの読者に読んでいただき、とても嬉しく思っております。また、反響の一環として、ある大手商社の中国支店長からは在日の中国系出版社をご紹介いただきました。私は「未来の世代の代表」を名乗り、市民社会の一員としての立場を踏まえて、幅広い講演活動を行い、こうした考えを訴える機会に恵まれました。
この本では国内外の数多くの有識者と意見交換を行うことを通じて「市民社会と政府が協力することによって補完し合う」ことがいかに重要であるかを説かせていただきました。
今日、人類が直面する危機は「文明の危機」であります。金融危機でも経済危機でもありません。その真因は倫理の欠如です。未来の世代に属する天然資源を乱用し枯渇させること、そして恒久的に有毒な放射性廃棄物および膨大な債務を後世に残すことは倫理の根本に反します。地球倫理の確立は、母性文明の創設の前提条件となります。この新しい文明は、倫理と連帯に立脚し、環境と未来の世代の利益を尊重する文明と定義できます。その達成のためには3つの転換が必要です。自己中心から連帯へ、貪欲から少欲知足へ、そして物質主義から精神主義への転換です。このような文明であれば、必要なエネルギーは自然・再生可能エネルギーで十分得られることは疑いがありません。ただし、過渡期においては化石燃料による補充が必要です。人類そして地球の長期的安全のために、原子力エネルギーを使用しない生活様式を取り入れて短期的犠牲を払う覚悟が必要です。
2冊目の『原子力と日本病』(朝日新聞社)は02年に出版され、20年に電子書籍化されました。ここでは「日本病」が世界に蔓延していることを訴えました。
私は日本病を責任感、正義感、倫理観の「三カン欠如」と分析しています。
1.「責任感の欠如」:責任の所在の欠如とも言い表すことができます。何か問題が起きたときに、何処に、誰にその責任があるのか。何か事を起こすときに、何処が責任をもって行うのか、それが曖昧なことが多いのです。
2.「正義感の欠如」:これが端的に見られるのは経済の分野です。経済至上主義の基となるGDP経済学は計量化されるもののみに立脚する経済学で、計量化されない大切な価値などを一切無視します。手段であるはずの経済成長が目的になってしまっています。そこには「倫理」や「哲学」が入る余地はありません。
3.「倫理観の欠如」:最も重要な概念です。倫理とは「人として踏み行うべき道」のことを言います。原発を推進することは「人として避けるべき道」であるということです。
天災超大国の日本では再稼働の緊急停止、原発ゼロは常識
――時間になりました。最後に読者にメッセージをいただけますか。
村田 今、地震が頻発しております。天災超大国である日本の原点に立ち戻れば、原発再稼働の緊急停止、原発ゼロは当たり前のことです。コロナ禍に原発過酷事故が重なれば、日本国家の崩壊すら憂慮されます。『Fukushima 50』をご鑑賞いただいた多くの読者の皆さまにはご理解いただけると思いますが、福島原発事故処理への対応に全力投球するためには、「東京五輪」中止(返上)の決断が必要です。また世界は「緊急事態宣言」下(放射能が存続する状態)にある「東京五輪」など、最終的には決して認めないと確信しております。
老子の言葉「天網恢恢疎にして漏らさず」にあるように、「倫理や道徳」に反する行為には必ず天罰が下る、不心得者は罰せられると信じているからです。
(了)