米中経済戦争は「覇権争い」次元だけじゃない。そこには人類文明のマネー支配の劇的転回も内包する。明治日本からの中央集権での利権は総崩れになる。

今日の日本時間の1時30分か。トランプが中国の輸出品に25%の関税をかけるかどうか。
中国の代表は、劉鶴副首相。習近平と中学時代に同級生で直々に引き上げられた。出身は人民大学だが、朱鎔基が二重通貨の解決(外貨兌換券を廃止)と国有企業改革に乗り出した1994年、40歳になる前にハーバードに留学し、MBAを取得。そして2011年に国務院の発展研究センターの副所長に着任か。
私が1988年にお世話した、呉敬連・周小川・楼継偉らからなる「日本近代化徹底調査ミッション」に入っていたメンバーとは、世代的には同じでも異なるグループにいた人でした。北京にある人民大学とはどんな大学か?朱鎔基や胡錦涛、そして現在の国家主席の習近平は北京精華大学の出身。これは理工学系の最高峰だが経済をマネーを人間社会のエネルギーの側面からとらえる経営管理学部も創設し、経済理論でも突出した。その初代が朱鎔基。北京大学は日本の東大と同じで、多くの官僚を生み出すが、国家指導者は少ない。
 習近平が権力を固めた後、汚職撲滅と農村や地方の経済振興を進める為に国家副主席に抜擢したのが、王岐山。この人は歴史研究の専門家で日本の岡田英弘氏の「ユーラシア」史観に共鳴している。彼は農村を貧困の現場から掬い上げ、どうしたら国家全体を富強にできるか、それを、儒教の正統論が指し示す事大的歴史観ではなく、極めて冷静に中国大陸の事実史をみつめ、自ら現場の実践で経験知を得たうえで、都市部の富豪・公務員(党員)たちを取り締まった。これは虚偽やファンタジーを完全に排除した、数字だけとは違った、リアルでの「経世済民」のやり直しだった。
 では、劉鶴はどうか? 人民大学は人文系だが、何が優れているのか?一言でいえば、ずばり、世界観でしょう。<天と地と人間・人間社会>を考える。そのなかで、どのような統治体であるべきか?そして、今の人類世界の覇権は、どのように形成され、現時点では、誰がそれを動かしているのか?こうしたことまで大きな視点で見つめ、その発信源を確かめた上で、ドルの運用実態やドルの信認性、そして、通貨の本質まで研究していたのでしょう。
 
 軍事力と通貨発行権で支えられた、戦後のアメリカの覇権構造と、その米ドルの行方。このとき、人民元をどうするか?「一帯一路」が王岐山なら、アメリカの覇権との対峙方法は劉鶴さんが担当したのかもね。会ってみたいなあ。いろいろ話してみたい。
現在の米ドルによるマネー経済の現場を知っていて、その時の理解は漢字ができた夏・殷時代から辛亥革命後の民国時代、さらにニクソンショック後の歴史経緯も全て知っていて、しかも、1815年始まった「金融ワンワールド」の仕組み・狙いも全て、この両者は知悉しているでしょう。
しかも、なんと自国内の金融決済に、世界で最も早く、ブロックチェーンを実現したのが、中華人民共和国だった。これは、精華大学グループの成果ですね。
 このブロックチェーンを、最も嫌がっているのが誰か、知っていますか?
それが、タックスヘブンに大量の隠匿資金を蓄えた「戦争屋」とそれに連なる人たち。そこには国籍に関係なく、マネーそのものが人を支配する力がある、と信じる人間たちが集まっている。
 ここで、読むべきものを二つ紹介。
一つは、「ブロックチェーン」に関する野口悠紀雄さんのインタビュー。核心部分は以下です。
野口;金融は情報を扱うという点では情報産業です。新しいITが取り込まれることにより金融が大きく変わるでしょう。その要素となるのがまずAI(人工知能)、そしてブロックチェーンです。保険の分野ではすでにP2P(ピア・ツー・ピア=個人間)でお金を出し合うような新しい形の仕組みも生まれています。
インタビュアー;ブロックチェーンといえば仮想通貨というイメージを持つ人が多いように思いますが、仮想通貨の価格が一時期のように投機的に高騰してしまうことは、決して望ましいことではありません。仮想通貨自体のファンダメンタルバリュー(本源的価値)はほぼゼロなので、日々の生活における決済や送金で利用されることにより、価値が上がるのが望ましい姿です。
野口:仮想通貨であろうと、国が発行する貨幣であろうと、通貨そのものには価値はありません。人々が価値があると思えば価値があるし、価値がないと思えばないのです。金本位制の金貨などとは異なります。(新井 注;簡単に言うと、情報=値段、そして、実質=物体としての金)・
仮想通貨が広く使われるためには、多くの人から「便利だ」と思われなければならない。例えば、先ほどの送金のことですが、仮想通貨はリアルタイムかつ低価格で送金できるのが特長であるにもかかわらず、一時期は価格が高騰してしまったために銀行の送金手数料よりも高くなるという現象が起きました。これでは使えません。
ブロックチェーンが資金調達に使われるといった新たなスキームも生まれています。それが、ICO(Initial Coin Offering)と呼ばれるものです。
ただし、2017年ごろには仮想通貨の価格が高騰したり、問題のあるプロジェクトが多数生まれたこともあって、海外ではICOが規制される動きもありました。こういったネガティブな例もあるものの、私は、ブロックチェーンは新しい可能性を開いたと考えています。

 導く先は、分散型自律社会。

一方、直近のこれからの日本経済について、テレビで人気の森永卓郎さん(ライザップやってアブラぽくはなくなったけど生気も減った?)が言っています。「とてつもない大転落」が来ると。皆さん覚悟しましょう。https://www3.nhk.or.jp/news/special/heisei/interview/interview_02.html
 

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。