中国TVドラマ『北魏馮太后』には、高句麗が全く出てこないが・・・。

 こんにちは。
 3月11日の震災のあと見るの中断していたのが、中国TVドラマ「北魏馮(ふう)太后」。
これを最後まで見ました。本当によくできたテレビドラマで、涙が何回もウルウルでした。
私がこうまでのめり込んだ理由に、中国側が、この北魏建国のドラマの中に、高句麗のことを、
一体、どのように描いているか、とても気になっていたからです。
史実として、馮太后が北魏の未来を託した孝文帝が、洛陽に遷都する大事業に乗り出していた時、
高句麗長寿王の死(491年)を聞いて、白装束で3日間、食事を絶ってその死を悼んだことが伝え
られています。その前年、490年に馮太后自身が死んでいるのですが、さて、どうだったか?
北魏の起源は、鮮卑族の拓跋珪が代王を称して自立した386年です。 私の研究では、
この年に日本列島の倭国に新たな政権が誕生します。応神天皇(ホンダワケ)の即位です。
応神の正体は、小林恵子先生が指摘したとおり前秦の苻洛です。この人の従兄弟が、東晋と
対抗した前秦の苻堅で、アレクサンダー、カニシカ王に続く世界主義者=ヘレニストでした。
そして、高句麗に仏教を伝えた人物でした。
このドラマの主人公の馮太后について、現在の中国政府は、今にいたる歴史発展のなかで、
中国の国家形成の上で、大社会改革を実行した人物として、大変評価の高い人物なのです。
野蛮な鮮卑族に、漢人が文明を指導した、というスタンスです。
前秦が滅亡した後に、この馮太后の一族、馮氏は、現在の北京と瀋陽の中間にある朝陽市に、
北燕という国を作りましたが、427年に高句麗長寿王が本拠を集安からピョンヤンに移すと、
北魏と組んで北燕を滅亡に追い込みます。このとき北燕最後の王、馮弘は436年高句麗に亡命
しますが、その最後は史書では、中国南朝の宋に逃れ様として長寿王に殺された、とあります。
馮太后が生まれたのは441年です。このとき、北魏と高句麗はきわめて親密だったはずです。
私が、なぜ、5世紀の高句麗にこだわるかというと、
 この時代に、高句麗が急速に国力を増していっているからです。
 そして、5世紀の日本列島は、甲冑時代と呼ばれるほど、戦いが多かったのです。
私の故郷である長野県にはこの時代の騎馬民族の遺跡が多く残っています。 その代表例が、
善光寺平の南部(屋代)にある森将軍塚古墳です。さらに五世紀後半になると、甲冑を繋ぐ
ものが、皮ひもから鉄鋲に変わるように、日本での鉄の生産と普及が盛んになっていきます。
しかも、このときの鉄は、それまでの鋳鉄ではなく、新たに鍛造鉄が始まっているのです。
日本列島、なかでも長野県に、多くの騎馬と、最新の製鉄文化が、どこから入ったのか?
これは、高句麗からであったに違いありません。
しかし、この時代、日本列島では、まだ、通貨はありません。
何で交易したのか?
私は、427年の高句麗の遷都により、華北の北魏、満州・遼東の高句麗と、勢力域が確定した
ことで、ユーラシア北方ステップル-トを通じ、西方諸部族の文化習慣や文明の利器、そして
有能な人物までが請われる形で、高句麗経由、日本列島に入り込んで来た、と考えています。
日本からは翡翠と金と絹が輸出され、大陸からは鉄文化・騎馬・養蚕の技能者や武人が入り込み、
その中間に位置した高句麗には、大量の文物と莫大な経済的利益の蓄積が進んだはずと考えます。
 しかし、ここで不思議なことがあります。
この時代の高句麗の王は、長寿王ですが、この王の陵墓は、かなり小さいものです。
一方、この5世紀の前半に築造された日本の古墳は、羽曳野市の誉田陵、さらに堺市の大山陵
など、その規模は、きわめて大きいのです。
 これは、高句麗に集積した富が、この日本列島で 使われたのではないか、と推測されるのです。
しかも、誉田陵からは、北燕の「鞍」と同じものが出土しているのです。
これは一体何か、です。
つまり、北魏馮太后 は、私達の日本とは、無関係ではないのです。
真実を解き明かす鍵は、高句麗にあります。
そうそう、聖徳太子の師匠の慧慈は、高句麗の僧でした。
高句麗と日本の天皇の関係を徹底的に消しているのが、中国の史書と日本の桓武系列なのです。
そして現在でも、この高句麗については、中国と、韓国・北朝鮮とは、その位置づけをめぐって、
政治的な論争が起きています。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。