中国に広がる「日式管理」。上手に生かして豊かになろう。

1)  中国語の電話。
 
 昨夜のことです。いきなり、中国語で電話がありました。
 掛けて来たのは、私が15年前、中国で会社を経営していたとき運転手だった、
 人間からで、当時は、20才そこそこの解放軍を除隊したばかりの青年でした。
 5年前は、中国の河南省や鄭州市の幹部たちの私的なお世話係りをこなし、
 けっこうな「顔」になっていたのですが、さて、何の要件でしょうか?
 いつもどおりの河南訛りで、しかも、回線の状態がよくありません。
 こちらから掛けなおして、聞いてみると、何でも、ここ2年間に会社を三つ立ち上げたので、
 できるだけ早い時期に、中国に来てほしい、というものでした。
 3つの会社とは、貿易会社に加え、農産品の加工会社、そして、酒造メーカーといいます。
 河南省の鄭州だけでなく、 湖南省の長沙にも、工場があるとのことです。
 経費は、自分で持ちますから、まず、来てください、というので、
 一体、何があるのか、少し勘ぐってみました。
2) 中国の変化
 河南省だけでも、人口は、1億人います。
 湖南省は、 8千万人くらいでしょうか。
 どちらも、農業が主体です。
 彼も、農産物に眼をつけているのですが、 今、 中国の富裕層が、
 何を求めているか、よく知っているのです。
 工業製品で、日本製品が優れているのは、すでに、知れ渡っていますが、
 今、中国では、日本の農作物が、大人気なのです。
 コメや、魚に、果物、そして、肉。
 
 日本からの輸入品は、高くても、上海、北京、広州の富裕層は買います。
 理由は、安全で、美味しいからです。
 日本の農産物は、ベラボーに高いのですが、中国国内産の農産物でも、今、
 差別化が、 進んでいます。
 日本に輸出している農場の農作物は、それを輸入する私たち日本人にとっては、
 まだまだ、不安がありますが、中国の消費者からすると、日本の安全基準をクリアーした
 ブランド産品になって、高級スーパーにでているのです。
 しかも、日本の農業技術者が支援した、果樹や肉類は、味がよく、高値で売れるのです。
 儲かる、となると、目の色を変えるのが中国人ですが、これまで、散々パラ、インチキをしたり、
 だましだまされの中国人社会に、今、変化が来ているようなのです。
 理屈抜きに、便利で、うまい、品質も確か、となると、そこに、消費者が、殺到するのです。
 
 今、中国に進出した、コンビニ3社(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート)は、
 どの店も、一店舗当り、日本の5~10倍の売り上げを記録し、急成長中です。
 
 驚くことに、一番、人気なのが、おでん ということです。
 これは、日本に留学した中国人が、その味と手軽に食べる習慣を 覚えて帰国し、
 それを観て、現地の親族・友人が真似て食べて、確かにうまいと広がっているのです。
 今から、15年前には、北京の一等地に、アメリカ資本の マクドナルドやケンタッキーが
 できたばかりで、大変話題になり、改革開放、そして市場経済の「味」がしたのですが、
 さて、今度の、日本のコンビニは、どんな「味」を 運んでいるのでしょう。
 2年前、ギョーザ事件に揺れ、中国の食品は、世界的に信用を失いました。
 また、中国国内の環境対策の遅れも、皆が認知し、中国人自身が不安を隠しません。
 こんな中、すでに中国に進出した日本企業に、今、大きなチャンスが来ています。
 材料から加工、販売まで、きちんと、管理し、しかも、無駄なく、ターゲットをしぼって、
 仕入れから在庫管理まで、徹底するマーケティング手法に、 中国政府が、注目し、
 それを、手本にしよう としているのです。
 < 同じ中国企業でも、日本の専門家や技術者がいると、信頼性が増す。>
 今、日本式の管理ができているものが、 商品の付加価値をあげ、販売を有利にしている。
 つまり、儲かる、と、中国人のビジネスマンは、 普通に考え出したのです。
 江沢民時代は、抗日の愛国教育が何度も繰り返されたのですが、いまでは、そんな時代は、
 とうの昔で、 日本のやり方を、取り入れたものが、中国市場で勝利し、成功するのです。
 これが、  「日式管理」  です。
 たぶん、電話の主は、このことを分かっていて、自分たちの会社の信頼性アップに、
 私と私の人脈を生かせないかと、考えているのでしょう。
 イデオロギーや観念の「政治」・・・これは頭の中の「THINK」がもたらしますが、これではなく、
 「現実」の快適さ、満足感、安心感、信頼感 ・・・ これは、生きている実感「FEEL」です・・・
  が、人間の行動を、決めだしているのです。
3) 中国 は 日本にとって、脅威か? 
 さて、そんな中国ですが、私たち日本人にとって、未来の脅威 に なるのかどうか?
 
 この正月、妻の実家の広島にいったのですが、そこで、テレビにもよく出る評論家の
 金文学さんと会いました。 金さんは、すでに、日本国籍をとっていますが、 中国の遼寧省
 生まれの朝鮮族で、日中韓の三ヶ国語を、自在に操ります。会話はもちろん、書く力もあります。
 20歳代で中国の芥川賞にあたる文学賞をとった後、日本、韓国、中国の比較文化の論評を、
 遠慮なくするために、 日本人になりました。
 その彼がいわく、中国の今後の可能性について。
 「新井さん、 日本では、戦後の30年間に、世界的なブランドがいくつもできました。
  しかし、中国では、鄧小平が1979年に改革開放を始めて以来、すでに、同じく30年
 になりますが、いまだに、一つとして、世界的ブランドが育っていません。
 まして、ノーベル賞の受賞者もいません。
 一方で、国家の資金を、海外に持ち出して逃げていった官僚・役人が、1万人以上います。
 この事実が、何を、語っているか、分かりますね」
 ニセモノを作ってでも、金をつくり、それで日本製品を買う。
 これが、どうも、北京オリンピックまでの中国人の理想でした。
 それが、ようやく、会社にしても、ブランドを育てるべく、自分自身が主体となって、
 世界的な信用を得ないといけない、と、真剣に考える段階になったのでしょうか?
 私は、電話の主の、会社を見たくなりました。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。