「朱鳥元年六月。天皇は草薙の剣が祟り病になった。(剣は)即日、尾張熱田社に送られた」日本書紀。

日本の古代史は楽しい。

記紀を全面的に信用する訳には行きませんが、ここには、数々の真実が埋め込まれています。

『高天原』という「神々の世界」から、如何にして、特殊血統の統治者が日本列島に舞い降り(実際は、渡来し)、ここで、中国の皇帝に対抗できる王権を作り出したか、というのが、全体構成です。

この「神々の世界」(明らかな創作)と、現実の日本列島を繋ぐ物語(事実の反映)が、『天孫降臨』。

そして、皇祖神アマテラスの化身である「持統」まで、一つの物語に仕立て上げること。

これが不比等の狙いでした。(記紀が書かれたときは、神武・天武などの漢風諡号はありませんでした)

その中で、私たちが見抜くべきは

①縄文からの連続性は?

②大陸の「殷周革命」、「戦国時代」、「秦の統一」の影響は?

③(「シュメール」発の)ヘブライとの接触は? 十支族やヤハウェはどこに関わる?

④最初の王権は、どこで生まれたか? 

⑤銅鐸がなぜ、書かれていないのか?

⑥王権の形式(統治方法)と、その支配地域の変遷は?

 などなど、たくさんあるのですが、記紀以外に、旧事記に風土記、中国・半島の文書、さらに、西側の文書・歴史はもちろん、各地の伝承と風習、そして、考古学的発見をもとに、自分なりに、一つのロジックで、一貫したスト-リー(歴史展開)を組み上げなければなりません。

 その中で、私は、天武(正確には、天渟中原瀛真人)が、伊勢の地で、「太一」を祭っていることをとても重要視します。これは、今でも伊雑宮(イザワノミヤ)での御田植神事の中で継承されています。

 しかし、この祭を、不比等は、日本書紀の中には、まったく書きませんでした。

「太一」は、前漢武帝のときに、基本概念が固まり、「天の中心に位置する北極神と解され、天皇大帝昊天上帝といった宇宙を統べる至高神」となり、それは、地上における唯一の支配者のみが奉ることができるものでした。当然、「太一」を奉る時には、自らの支配領域は無限大であり、限定する意識はみじんもありません。天武がそれをすれば、中華皇帝と対抗します。天武の意識は、中華皇帝(唐の高宗)を凌ぐものだったのです。

日本書紀の中で、天武のそうした姿勢が伺える記載があります。

また、不比等が掲題のように、神代編で、スサノオが高天原を追放された後、大八洲(日本列島)に現われ、ヤマタノオロチから取り出した「草薙の剣」が、・・・ヤマトタケルの物語を経た後・・・天武自身に「祟った」と書き、その最期の臨終の期間を、わざわざ、「朱鳥(アケミトリ)」として元号をつけています。

 天武とは、何者か?何で、「草薙の剣」が祟るのか? 私の古代史探索では、ここがとても大きなテーマでした。これには、もちろん、ヘブライも、秦の始皇帝も、関係します。詳しくは、拙著をお待ちください(お急ぎの方は、DVDをどうぞ)。

 天武《天渟中原瀛真人》関係で、見逃してはならないと考える部分を、一部ですが、以下、書き出しておきます。

◎天武天皇十二年(683)正月丙午《十八》◆丙午。詔曰。明神御大八洲日本根子皇勅命者。諸國司。國造。郡司及百姓等。諸可聽矣。

朕初登鴻祚以來。天瑞非一二多至之。傳聞。其天瑞者行政之理。協于天道則應之。是今當于朕世。毎年重至。一則以懼。一則以喜。是以親王。諸王及群卿百寮。并天下黎民。共相歡也。乃小建以上給祿各有差。因以大辟罪以下皆赦之。亦百姓課役並兔焉。▼是日。秦小墾田■。及高麗。百濟。新羅三國樂於庭中。

◎天武天皇十四年(685)二月庚辰《四》◆二月丁丑朔庚辰。大唐人。百濟人。高麗人。并百四十七人賜爵位。

◎朱鳥元年(686)正月癸卯《二》◆朱鳥元年春正月壬寅朔癸卯。御大極殿而賜宴於諸王卿。

 ▼是日。詔曰。朕問王卿以無端事仍對言得實必有賜。於是。高市皇子被問以實對。賜蓁指御衣三具。錦袴二具。并■廿疋。絲五十斤。緜■百斤。布一百端。伊勢王亦得實。即賜皀御衣三具。紫袴二具。■七疋。絲廿斤。緜册斤。布四十端。▼是日。攝津國人百濟新與獻白馬瑙。
 

◎朱鳥元年(686)正月丁巳《十六》◆丁巳。天皇御於大安殿。喚諸王卿賜宴。因以賜■緜布。各有差。是日。問群臣以無端事。則當時得實重給綿。

◎朱鳥元年(686)六月戊寅《十》◆戊寅。天皇病祟草薙劔。即日。送置于尾張國熱田社

  ・・・不比等は、「草薙の剣」が祟って天武が倒れてから、「朱鳥」と元号をつけた。

◎朱鳥元年(686)七月戊午《廿》◆戊午。改元曰朱鳥元年。〈朱鳥。此云阿訶美苔。〉仍名宮曰飛鳥淨御原宮。

▲29朱鳥元年(686)九月丙午《九》◆丙午。天皇病遂不差。崩于正宮。

ps: 実は、今の2013とは、このときの天武の霊が、大暴れしているというのが、私の理解です。朱鳥は、フェニックスなのです。天武ほど、魅力的な大王はいません。それを押さえ込んだ、三人の女性もまたすごいです。

 3人とは、もちろん、后であったウノノササラ(持統)、額田王、そして、大陸で史上初の女性皇帝になった則天武后。不比等は、この4人の中で、動き回り、今の日本国の原型を作り出したのです。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。