送り盆の日、川中島で麻(ヘンプ)のイベント。

にっぽん文明研究所の奈良泰秀さんが長野に来るというので、
今日の昼間は、長野市立博物館まで、車で行きました。
そこでは、「信州の麻文化」をテーマにした、展示とシンポジウムが
開かれ、奈良さんたちは、ここで、開所式の神事を務められました。
その様子をデジカメで撮った人がいて、処々にタマユラが出ていました。
私が、今回、奈良さんに、会いたくなったのには、理由があります。
 
グローバル化の進展で、21世紀の日本人は自らのアイデンティティーに、
大きな困惑がおきていて、さらに、大量の商業ベースのメディア情報に洗脳
されて、 過度の「自己喪失」に向かいだしている からです。
 私はそれに対する、対策の必要性と、自分が考えた対案を 相談したかった
のです。
 日本は天皇が君臨する国です。
その天皇は、持統・不比等が7世紀末に、列島統治のために作り出した皇祖神
アマテラスの肉体を持った直系の子孫とするのが皇国神話で、これを明治政府は、
さらに、中央集権のために補強し、天皇の存在自体を、アラヒトカミ にしました。
第二次大戦の敗戦で、アラヒトカミは否定されたあと、日本人は、経済成長神話
に身をゆだね、金儲け以外、思考を停止することで、自分のアイデンティティーの
確認を放棄したままでした。
 
 それが、経済成長が見込めなくなった今、誰もが、自分の置かれている、足元の
真実、自分がいる国家の本質を、突き詰めて考える状況に追い込まれています。
 
 そのとき、天皇や国家の起源を いい加減なままにしておくのは、戦前同様、
記紀の神話のなかに、自分の理性の核心を 埋没させているのと同じです。
 
 建国神話の御伽噺でしか、私たちが、自分の国の始まりを語れないのでは、
海外の人たちとの間で、共通の理性基盤を作るのを困難にするだけでなく、
 グローバル化の時代にあって、自分を基点にした未来社会を構築できないまま
でいることになります。
 日本人の精神的なよりどころとなっている、神社界(神道界)や仏教界、さらに、
すべての宗教界にとって、国民統合の象徴である天皇の、その権威の「核」を、
7世紀に、持統・不比等が作り出したアマテラスのみに、依拠するのではなく、
 日本人の文化特性を生み出した、 ヒスイの勾玉=ヌナカワを基本に、
 「日本化」する力の原動力にスポットを当てて、
 精神や理性の発展過程の歴史的な考察から見直さないと、
 日本の社会が、これから完全に壊れて粉砕してしまう、というのが、
 私の危惧です。
 考えてみるに、一体、いつから、日本列島に、人間が生きていたのでしょうか?
 ウルム氷期が終わった1万3千年前から、縄文時代が始まりましたが、
 それよりも、さらに前の、石器時代にも、日本列島には人間が暮らしていました。
 その典型的な痕跡が、長野市の水瓶となっている野尻湖にあります。
 
 一昨日の14日から、長岡京の野村画伯がこの北信州に来られたので、一緒に
 志賀高原に行った後、翌日、柳沢遺跡を案内し、斑尾・野尻湖・黒姫を回りました。
 私たち家族は、その足で、野尻湖のナウマン象博物館を回りました。
 ナウマン象がいたのは、氷河期の4~2万年前ぐらいで、最盛期が3万年前。
 そのころ、野尻湖には、新人(クロマニヨン)がいて、彼ら野尻湖人による乱獲が
 ナウマン象を絶滅させてしまいました。
 こうした考古学が示す歴史事実と、皇国神話(神代編)は、
 どうしても、噛み合わないのです。
 
 私たちが、日本の基層と考える縄文人も、野尻湖人からすれば、
 ウルム氷期が終わってからあとに、日本列島にやってきた「渡来人」です。
 一体、いつ、「日本人」が誕生したのでしょうか?
 
 日本列島での、王権の誕生には、 最初のヘブライ人の到着、倭国の成立、
 聖徳太子、大化改新、 伊勢神宮の造営、 大宝律令、記紀の編纂、東大寺まで、
 多くの「画期」が考えられますが、
 
 >> 外来のものを、日本化する文化力の根源は、 一体何なのか?
 私は、 それこそ、
 6千年前から、続く、ヒスイの文化と考えています。
 そして、 その時代から、衣服や、住居に使われていたのが、麻 です。
私は、奈良さんに、
 「これからは、ヒスイの勾玉の時代です。 皇室に伝わる三種の神器に、
  ヤサカニの勾玉があるのですから、これを神社界からも、出していきましょう」
 といったのですが、
 「今の神社界、中でも神社本庁は(鏡が主で)、変革はできないのではないか。」
 とのことでした。
 
 それならば、自分でやるしかありません。
 長野市博物館は、川中島古戦場の中にあります。
 
 麻は、日本の伝統文化で重要な地位を占めながら、明治以後の近代化にあって、
 原油が人類活動のエネルギー源として 国際政治の戦略物資になっていく中、
 これを原料にナイロンが作られ化学繊維も開発されると、どんどん市場を失って
 いきました。
 今、 環境の時代、麻を、見直す。
 
 この展示は、信濃から、麻を使った日常生活を普及させようとの試みです。
 麻の復権は、 近代化のマイナス面の克服です。
 これまでの、化石燃料を使った強圧的支配の文化は、
 もう終わりにしないと いけません。
 これは、明治以降に登場した、日本のすべての宗教界にも、 
 大動揺と変革を、もたらすことになるでしょう。
 2009年の送り盆は、 面白い日となりました。

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この記事を書いた人

新井信介

1957年長野県中野市生まれ。東京外国語大学(中国語専攻)から住友商事を経て独立。中国の改革開放に立ち会い、独立後は西欧世界にもネットワークを構築。地球史の視野で、国家・宗教・マネーの意味と構造を探り、個人の可能性(想像性・創造性)と、普遍的文化価値を探求している。そのために、『皆神塾』を主宰し、会員制の『瓊音(ヌナト)倶楽部』も立ち上げて、研鑽を深めています。